このドラマには愛と優しさしか転がっていない。
先天的なものもあれば後天的に気づくものもあって、でもベースに必ず愛と優しさで全てのものを拾ってくれるから、安心して見ていられるし、ずっとこのドラマに浸っていたくなる。
大きな社会問題ではなく、日常に転がっていそうな小さな綻びにフォーカスを当て、境遇や性格が違う人同士がそれぞれに影響を与え合うことで、その綻びを肯定的に受け入れることができたり、補い合って変えていける部分があったりと、些細でも大切な日常の変化の尊さに気づかせてくれる傑作。
人にはそれぞれの綻びがある。
綻びとはコンプレックスとも弱みとも近しい。
何もかもが完璧な人間などいないし、それでも全然よいんだと、綻びを持ちながら生きていくことをむしろ愛おしく感じさせてくれる。
「おカネの切れ目が恋のはじまり」とは、お金を通して何でもすることができる、もしくはお金に追われることで何もできなくなることへの決別から、本当の恋が始まるということではないだろうか。
お金の関係ではなく、お金で解決するのではなく、もしくはお金のことで頭がいっぱいにならざるを得なくなってしまうのではない状態の中で、その人のことをちゃんと見た上で、お互いがお互いに対してどう思うか。
そこから本当の恋が始まる。
お金にまつわる問題が多方面から描かれる。
1円からお金を大切に扱う玲子。
でも15年間片思いの早乙女には、余すことなくお金を使っていた。
それは一つの綻びかもしれないが、彼女なりの愛でもあった。
でもそのお金だけの関係では、恋愛は前に進まなかった。
社長の息子でありお金を浪費のように使う猿渡慶太。
後先考えずにお金を使っていたが、その金遣いの粗さから彼女であったまりあからは愛想を尽かされてしまう。
でもお金のことを徐々に学んでいくことで、お金で何かを解決するのではなく、ちゃんと相手を見て何を望んでいるのかを考えられるようになっていく。
元々人想いで人たらしの慶太は、たくさんのお金を持つ生活からの切れ目から、より相手のことを考えられ、まりあとの仲を取り戻して恋が芽生えるようになっていった。
早乙女もお金に囚われてしまっていたが、その切れ目から本当に大切なことに気づいていき、今までの自分を反省するものがあった。
それによって誰かの恋にも敏感になった気がした。
あとは家族のことを一身で世話をすることでお金に悩んでいる純もお金の悩みがなくなることで、本当に自分のための恋に踏み込んでいけるのではないだろうか。
個人的には純の行く末も気になって仕方ないところだ。
このようにお金からの切れ目によって、それぞれの恋が始まったり前進したりすることで、本当に大切なこととは何かについても考えさせられる内容となっている。
タイトルも含めて本当に秀逸な作品だ。
そして、このドラマは冒頭にも書いた通り、綻びを持つ人間に愛おしさを与えていっているのだが、これが誰もを悪者として描かない大島里美さんらしさがとても出ている優しい脚本である。
人間をこのように性善説的に描く作品は理想論かもしれないが自分はとても好きで、さらにそれが綻びを補い合いながらより優しく愛おしい関係に昇華されていくのが本当によきです。
最近の作品だと『僕らは奇跡でできている』や『義母と娘のブルース』の際に抱いた好きの感覚と近い。
4話で終わるのが本当に名残惜しい作品ではあるが、慶太役を三浦春馬さん以外に務まるだろうか。いや務まらないだろう。
それくらいに彼が役にハマっていて、演じ切っている。
最終回も噛み締めて鑑賞していきたい。
P.S.
それぞれの回のあとにした愛が溢れまくっているツイートも一覧で載せておきます。
【1話】
お金にまつわる問題をこれだけ多方面に1話で描き切り、それぞれの特性がちゃんと掴めて、それでいて飽きないスピーディーな展開とおもしろい脚本。そして何より後ろめたさを感じそうな側面を持つキャラクター全員を好きになれる描き方が本当に素晴らしい。好き!
大島里美さんの描く交わりそうじゃない人たちの邂逅から始まる物語が本当に好き。コンプレックスを愛おしく包み込みながら気づかせていき、魔法にかかったように理想的な関係性が築かれていく。本作以外にも、『サヨナラまでの30分』『凪のお暇』『あと3回、君に会える』『わた恋』と脚本されてる作品全部好き!
【2話】
日常生活にフォーカスして、大切なことにじんわりと気づかせてくれて、その上で上手に毎日に対して優しく背中を押してくれるドラマ。しかも一つ一つが自然で全然説教くさくない。そして一番は描かれる人物像の愛おしさね。脚本もキャストも含めて全てよきー!
こんなに色んな立場の味方になってくれるドラマって意外とそんなにないと思う。「反省」と「誰かは見ていること」がちゃんと描かれているのがポイント。猿渡が玲子を傷つけてしまったことに反省して、元気にしようとする健気な姿とまりあのことをちゃんと見ているのが本当によきでした!
さらに玲子はそんな猿渡とまりあのことをちゃんと見ていて、まりあも玲子や猿渡のことをちゃんと見ていたんよね。こういう客観的視点を抜け目なく入れて、不自然さを出さない細やかな演出と脚本が本当に好き!誰かが見てくれて味方になってくれたら、生きることに少しでも前向きになれる!
【3話】
何がいいって、松岡茉優さんと三浦春馬さんが少年少女並みにピュアで優しくて愛おしくて…驚くほどにハマってるんよね!もうね、この2人じゃないと絶対ダメなんですよ!お似合いすぎて!2人ともめっちゃ可愛い!
何で2人じゃないとダメなのかって理由は演技力だけでなく、2人の人間性なんですよね。2人とも繊細で優しくて感受性豊かで、周りに人一倍気を遣える方だと思うんですよ!それは他のテレビでもふとしたところで出ている。だから役でも内から滲み出てる感じがする!
松岡茉優さんの色んな感情が頭の中では溢れながらも、それをどう表に出すのかわからなくてうーってなっていく演技が凄すぎて、彼女はどこまで進化するんだろうと驚きを隠せない。やっぱり最も好きな女優さん。彼女には人間性や考え方など含めで惹かれています。
そして底抜けな明るさがベースにありながらも、ちゃんと相手のその場の気持ちも捉えて、猿渡として表情を変えていく三浦春馬さん。玲子を見守ってるときに移り変わっていく一つ一つの表情が全て絶妙!泣きの表情ももちろん、最後の「これは恋なのか!?」とポカンとした表情がかわいよすぎた。