三浦春馬さんのことはコラムで書いたから、ストーリーに絞って簡単な感想を書こうと思う。
第一話、とても良かった。分かりやすさと面白さが両立していて、ノーストレスで楽しめる作品だった。きっと、そういうドラマが今は合ってるし、とてもありがたい。
この作品のテーマは、タイトルにもある通りお金だ。浪費家の御曹司が、清貧を信条とする教育係との交流で変わっていく。基本ほっこりしていて、優しさに満ちた作品だ。
とはいえ、『ウシジマくん』とか『銭ゲバ』とか、お金をテーマにする以上はシリアスでダークな展開が必要になってくる。お金は人を豊かにもするし、壊しもする。『半沢直樹』もお金をテーマにした作品だけど、カタルシスの裏では多くの人を巻き込んでいる。エンタメに徹している分、二次的被害を描いていないだけだ。
ただ『カネ恋』に関しては、それとは逆にミニマムな関係性に徹している。浪費家の御曹司は、性格が良く、父親には悩みの種だが何か社会的に致命的な迷惑をかけているわけではない(会社の経営には打撃だけども)。
ネガティブ、あるいはシリアスに寄せない範囲で、お金の正しい使い方というか、お金と心のバランスを描いているようにも思える。
第一話では、北村匠海さん演じる御曹司の後輩が、家が貧乏で弟妹がたくさんいて、奨学金の返済も苦しい、といった部分でちょいシリアスな描写が描かれたけど、これも1つの王道の展開というか、かなりベタな設定に終始していた。
フリマアプリで会社の商品を転売するとか、経費精算をちょいいじるとか、色々と現代的なエッセンスは足されているけど、5年前でも、もっというと10年前でも成立する話かもしれない。
しかしそれは決して悪手ではなく、普遍的なものを描くことで、「今回は現代社会に訴える!とか、お金に翻弄されがちな我々に問題提起!みたいなものではないですよ」と視聴者を落ち着かせることができる。特にお金をテーマにする以上、人の悪意が見え隠れするのは避けられず、前もって作品のトーンをきっちり見せることで、こちらも「きっと嫌なものは描かれないな」と思えるのだ。
同時に、飲み会の際の「なんで割り勘なの?」という、おそらく多くの人が疑問に思っていたところに、松岡茉優さん演じる主人公の優しい気遣いが入るから、普遍性が共感性にもスライドしていき、心地が良い。
(また、ストーリーが普遍性を帯びると、相対的に役者の目立つ割合が増えるという効果もある。ストーリーがすんなり理解できると、視聴者の目線がより役者の演技に割かれるようになるため)
御曹司と教育係の関係にしても、貧富の差が生まれてしまいそうになりつつも、どちらも「いい人」にすることで、バトル展開にならないように気を配っている。新しい点があるとすれば、この部分ではないか。
2人がバトってやり合って、互いの主張がぶつかり、事件を乗り越えて仲良くなる……的な展開が王道だけど、少なくとも第一話に関しては、つっけんどんになりかけた教育係に御曹司がめげず、割と初期段階で良好な関係になる。ここはかなり大きく、観ている側も「口論とかそんなにないんだろうな」と思えるから、心穏やかにいられるのだ。
だらだらと書き綴ったけれど、一言でいうとこの作品は「脱・シリアスでお金を描く」という優しさに満ちたドラマ。もともとお金は万人に共通するもので、共感性を得やすい題材ではあるけど、本作では「お金の怖さ」よりも「清貧」に重きを置いたことで、ドロドロ感がない。もともとどうしてもフラットな気持ちで見づらい(三浦春馬さんのことがあり、画面を見るだけでつらくなる瞬間もあるだろう)からこそ、こうした穏やかな物語なのは、観る側の僕たちにとっても救いといえるのではないだろうか。