【SYO(映画ライター)さんの視聴ドラマの口コミ・感想・評価一覧】

  • おカネの切れ目が恋のはじまり 第1話

    5.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    優しさがありがたい



    三浦春馬さんのことはコラムで書いたから、ストーリーに絞って簡単な感想を書こうと思う。

    第一話、とても良かった。分かりやすさと面白さが両立していて、ノーストレスで楽しめる作品だった。...
    続きを読む

    三浦春馬さんのことはコラムで書いたから、ストーリーに絞って簡単な感想を書こうと思う。

    第一話、とても良かった。分かりやすさと面白さが両立していて、ノーストレスで楽しめる作品だった。きっと、そういうドラマが今は合ってるし、とてもありがたい。

    この作品のテーマは、タイトルにもある通りお金だ。浪費家の御曹司が、清貧を信条とする教育係との交流で変わっていく。基本ほっこりしていて、優しさに満ちた作品だ。

    とはいえ、『ウシジマくん』とか『銭ゲバ』とか、お金をテーマにする以上はシリアスでダークな展開が必要になってくる。お金は人を豊かにもするし、壊しもする。『半沢直樹』もお金をテーマにした作品だけど、カタルシスの裏では多くの人を巻き込んでいる。エンタメに徹している分、二次的被害を描いていないだけだ。

    ただ『カネ恋』に関しては、それとは逆にミニマムな関係性に徹している。浪費家の御曹司は、性格が良く、父親には悩みの種だが何か社会的に致命的な迷惑をかけているわけではない(会社の経営には打撃だけども)。

    ネガティブ、あるいはシリアスに寄せない範囲で、お金の正しい使い方というか、お金と心のバランスを描いているようにも思える。

    第一話では、北村匠海さん演じる御曹司の後輩が、家が貧乏で弟妹がたくさんいて、奨学金の返済も苦しい、といった部分でちょいシリアスな描写が描かれたけど、これも1つの王道の展開というか、かなりベタな設定に終始していた。

    フリマアプリで会社の商品を転売するとか、経費精算をちょいいじるとか、色々と現代的なエッセンスは足されているけど、5年前でも、もっというと10年前でも成立する話かもしれない。

    しかしそれは決して悪手ではなく、普遍的なものを描くことで、「今回は現代社会に訴える!とか、お金に翻弄されがちな我々に問題提起!みたいなものではないですよ」と視聴者を落ち着かせることができる。特にお金をテーマにする以上、人の悪意が見え隠れするのは避けられず、前もって作品のトーンをきっちり見せることで、こちらも「きっと嫌なものは描かれないな」と思えるのだ。

    同時に、飲み会の際の「なんで割り勘なの?」という、おそらく多くの人が疑問に思っていたところに、松岡茉優さん演じる主人公の優しい気遣いが入るから、普遍性が共感性にもスライドしていき、心地が良い。

    (また、ストーリーが普遍性を帯びると、相対的に役者の目立つ割合が増えるという効果もある。ストーリーがすんなり理解できると、視聴者の目線がより役者の演技に割かれるようになるため)

    御曹司と教育係の関係にしても、貧富の差が生まれてしまいそうになりつつも、どちらも「いい人」にすることで、バトル展開にならないように気を配っている。新しい点があるとすれば、この部分ではないか。

    2人がバトってやり合って、互いの主張がぶつかり、事件を乗り越えて仲良くなる……的な展開が王道だけど、少なくとも第一話に関しては、つっけんどんになりかけた教育係に御曹司がめげず、割と初期段階で良好な関係になる。ここはかなり大きく、観ている側も「口論とかそんなにないんだろうな」と思えるから、心穏やかにいられるのだ。

    だらだらと書き綴ったけれど、一言でいうとこの作品は「脱・シリアスでお金を描く」という優しさに満ちたドラマ。もともとお金は万人に共通するもので、共感性を得やすい題材ではあるけど、本作では「お金の怖さ」よりも「清貧」に重きを置いたことで、ドロドロ感がない。もともとどうしてもフラットな気持ちで見づらい(三浦春馬さんのことがあり、画面を見るだけでつらくなる瞬間もあるだろう)からこそ、こうした穏やかな物語なのは、観る側の僕たちにとっても救いといえるのではないだろうか。
  • MIU404 第11話

    4.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    悪意はなくならない

    『MIU404』が、終了した。

    今回描かれたのは、私怨と正義のどちらをとるか。仲間を傷つけられた伊吹と志摩が、久住を追うためにどんな手段をとるのか。2人の絆にも危機が訪れる。

    久住の...
    続きを読む 『MIU404』が、終了した。

    今回描かれたのは、私怨と正義のどちらをとるか。仲間を傷つけられた伊吹と志摩が、久住を追うためにどんな手段をとるのか。2人の絆にも危機が訪れる。

    久住のキャラクターには『ダークナイト』のジョーカーとのリンクが見え隠れしていたが、今回もニヤリとさせられる要素が満載。たとえば久住はジョーカーと同じ紫の衣装を身にまとっているし、「何が目的か、何を考えているか知りたい」と言う伊吹に対して「何もないよ」と返す。

    面白いから、やる。本心では何か目的があるのかもしれないが、他者に告げることはない。震災の被災者か?と思しき要素がちらりと見えるが、その部分も前回同様に「相手に合わせて自分の過去を創作して話す」の一環かもしれない。これも『ダークナイト』のジョーカーとの類似点だ(ちなみに、志摩がコイントスをするシーンはトゥーフェイス好きにはニヤッとさせられるかもしれない)。

    確かなのは、彼が「犯罪者」であるということだけ。しかしその部分も、データを巧妙に改ざん・或いは消去して曖昧にしてしまう。非常に現代的な知能犯であり、ある種の「ゴースト」的な存在だ。データ社会では、悪意すらも立証できない。ネット上の誹謗中傷のように。

    こういったデジタルな犯罪者に対し、リアルな方法論で刑事が追い詰めていくのが、近年の王道ライン。本作もその流れにのっとり、伊吹と志摩は肉体を酷使していく。そしてまた、他人を切り捨ててきた犯人が、複数の正義に追い詰められていく展開も、王道だ。

    最終話はそういった意味で、実にスカッとするザ・エンタメの構造になっているのだが、シーズンを通して観てみると、その中にも現代社会への問題提起を組み込んでいるのが、本作の特長。特に、上記に挙げたような「ネット社会における他者の残酷さ」は、シーズンを通して毒を放っている。

    久住が放つ「お前たちの物語にはならない」という言葉は、まさに現代ならではの感覚だ。一面的な情報だけでストーリーをでっちあげ、簡単に他者を判断した気になり、レッテルを貼ってしまう――。現代社会の弊害から生まれたキャラクターとして、久住にはどこか悲惨さが付きまとう。

    最終話では新型コロナまで採り入れており、制作陣の臨機応変さに感嘆させられるとともに、志摩と伊吹が今の世に必要であると思わせてくれる『MIU404』。しかし、どこか異物感が残るのは、他者からのバーチャルな悪意が、依然として私たちのすぐそばにあり続けるからなのかもしれない。

    結局、久住に「乗っかった」ネット上の人物たちは、何も裁かれずに生き続けるのだから。
  • ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事~

    5.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    忙殺の中の、貴重な癒しだった

    レビューというよりも、この作品との思い出の話。

    日本のテレビドラマとの関係は、不思議だ。小中高は、当たり前のようにかじりついて観ていた。映画館に頻繁に行けるわけじゃないし、アニメや漫画とは...
    続きを読む レビューというよりも、この作品との思い出の話。

    日本のテレビドラマとの関係は、不思議だ。小中高は、当たり前のようにかじりついて観ていた。映画館に頻繁に行けるわけじゃないし、アニメや漫画とは違うワクワク感がある。僕が実家暮らしだったころは山田孝之さんがドラマに出まくってて、追いかけて観ていた。

    しかしそのドラマ熱は、大学に進学して上京すると、一気に冷めてしまう。初めての1人暮らしで忙しくなったり、ものづくりに目覚めたり、色々理由はある。これはたぶん作り手あるあるだと思うけど、洋画に傾倒する時期というのがあって、何年か国内のドラマからは離れていた(当時はHDDに録画とか配信サービスとかもなくて、リアタイで観ないと結構大変だった)。

    そうこうするうちに就職して、朝から夜中まで働く生活に突入した。編集プロダクションに入って、終電にダッシュする毎日。どんどんドラマから離れる。映画雑誌の仕事だったから、空いている時間は全部映画鑑賞に使った。そんななかで、何故かこのドラマだけは必死に録画して観ていた。

    まず、小さい時に渡部篤郎さんの出演作をよく観ていたことがある。そして、佐藤健さんが好きだった。『龍馬伝』に『るろうに剣心』に、どんどん駆け上がっていく彼に注目していたというのもある(多分このころ、初めてインタビューに同席したような……)。この2人が父子役を演じて、しかも刑事もので、バディを組む。さすがに、観ない選択肢はなかった。

    …面白かった。2人の掛け合いもそう、テンポ感もそう、だけれど強く覚えているのは、その明るさとかわいらしさだ。観る者を楽しませよう、というファニーなつくりになっていて、息子の父に対する複雑な心境が、ダークやシリアスでなく、かわいらしいものとして配置されていた。佐藤健さんが渡部篤郎さんに対して拒絶演技を繰り出すのだけれど、そこにはちゃんと愛情があって、そういった2人の「本当は愛し合っている親子」という関係性が、心地よかったのだ。

    そのころはやっぱり仕事ではハリウッド大作とか、趣味ではディープなヨーロッパ映画とか、ばっかり観ていて、もちろん昔も今も大好きだけれど、気軽に観られて、フフッと笑える作品というのはなかなか自分の中に入れていなかった気がする。

    平日はなかなか観られなくて、土日に洗濯物をたたみながら、録画した本作を観るのが小さな幸せであり、安らぎだった。久しく観られていないから、どこかでまた時間を見つけて観てみたい。

    6年が経ち、あの頃とは何もかも変わってしまったけど、このドラマはまた笑顔をくれるような気がする。そして多分、今の自分はそれを求めている。
  • MIU404 第10話

    4.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    普通の人々が、恐ろしい

    『MIU404』も、最終回まであと1話。第10話では、志摩(星野源)&伊吹(綾野剛)と久住(菅田将暉)の対決が加速する。雰囲気や演出もグッと流麗になり、サスペンス感増し増しに仕上がった。

    ...
    続きを読む 『MIU404』も、最終回まであと1話。第10話では、志摩(星野源)&伊吹(綾野剛)と久住(菅田将暉)の対決が加速する。雰囲気や演出もグッと流麗になり、サスペンス感増し増しに仕上がった。

    単純に非常に面白い内容だったので、純粋に楽しんでしまったのだけど、洋画好きとしてはニヤニヤするポイントがいくつかあったので、記載したい。

    まずは、久住の「人によって話を変える」描写。これは『ダークナイト』のジョーカーと一致する。そもそも、過去も執着もなく、純粋に破壊と混沌を楽しむキャラクターという部分でも、近いところが多い。

    ジョーカーの恐ろしいところは、動機が分からないこと。神出鬼没であること等々。久住のセリフ「人間やないんかもしれんなぁ」は、悪の権化、化身であるジョーカーともリンクする。

    ただ、もちろん違いはあって、大衆の操作だ。『ダークナイト』のジョーカーは、大衆に問いかける。久住は、使い捨てにする。フェイクニュースをSNSに投下して、一般人を巻き込んでいく。また、実際に犯罪を起こす/起こさないという部分も異なる。とはいえ、精神性はなかなかに近く、最終回でどう変化するのかがが楽しみだ。

    そして、これは第1話からだけれど、REC(渡邊圭祐)の家に貼ってある『ナイトクローラー』のポスターにフフフ…となる。このキャラクター自体『ナイトクローラー』のオマージュ的なポジションでもあるのだけれど、事件現場にいち早く駆けつけて衝撃動画を撮るナイトクローラーという存在は、もう現代社会では廃れ気味らしい。

    その原因の1つとなっているのが、個人のSNS投稿。いまや誰もがスマホで簡単に撮影して、ナイトクローラーになれる時代になった。…という前提があったうえで今回を観ると、なかなか興味深い。志摩がRECに言う「あなたは点と点を強引に結びつけてストーリーを作り上げる」というセリフも、『ナイトクローラー』の主人公の後半の行動に共通する部分がある。

    …という部分が、1人で結び付けて楽しかったところ。
    最後に、上とは別にグッと来たところを書いておきたい。

    ネット上で標的にされ、大衆による誹謗中傷をもろに受けた桔梗(麻生久美子)は、帰宅してこう吐き捨てる。「ふざけんなっつーの。働いてるんだよこっちは。古臭い男社会でめげずにきっちり働いてきた人の努力をさ……なんだと思ってるの。馬鹿なの?」、すごく重い言葉だ。同時に「何を言っても絶対に反論しない相手は叩きやすい。みんな誰かを裁きたくて仕方ないんだよ」という志摩のセリフも刺さる。

    何が恐ろしいかというと、これをフィクションとして僕たちは楽しんでいるわけだけど、現実に多くのSNSユーザーが、何らかの攻撃や誹謗中傷を他者から受けた経験があるということだ。だからこそ、桔梗さんの言葉が他人事に思えない。だがそれは、逆説的にSNS社会の闇を感じさせる。「わかる」ということが、恐ろしい。

    そしてまた、上記のシーンを見て「桔梗さんかわいそう」「志摩さんわかる」と思っている人が、その手で他者を傷つけている可能性が多分にあるということ。これもまたぞっとさせられる。

    誹謗中傷を受けた被害者の姿を、可視化した今回の『MIU404』。姿を見せず、こちらを攻撃し続ける敵と、そこに加担する普通の人々。実に暗澹たる気持ちにさせられる。これは決して、飛躍した描写ではなく、SNSを開けばすぐ行き当たる光景だからだ。
  • 私の家政夫ナギサさん 第8話

    4.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    「差別」に対する、2つの仕掛け

    何を隠そう、『私の家政夫ナギサさん』にハマっている。新作ドラマは面白いものが多いけれど、本作は中でも「考えさせる」作品。火曜10時枠は『逃げるは恥だが役に立つ』『わたし、定時で帰ります。』等々、... 続きを読む 何を隠そう、『私の家政夫ナギサさん』にハマっている。新作ドラマは面白いものが多いけれど、本作は中でも「考えさせる」作品。火曜10時枠は『逃げるは恥だが役に立つ』『わたし、定時で帰ります。』等々、働き方をテーマにしたものが多く、その流れをくんでいる作品でもある。

    第7話までをまとめたコラムはFRIDAYデジタルさんで書いたので(宣伝!)、第8話はこちらでぽつぽつと。本当は感想とか考えずに楽しもうと思っていたのだけれど、観ていたら「これは書かねば!」と思ってしまい……。というのも第8話、結構ハレーションを起こしそうな気がしたからだ。これはかなりの挑戦回だと思う。

    もともと『私の家政夫ナギサさん』は心温まる反面、とても勇敢なドラマで、女性の男性に対する差別と偏見に切り込んでいる。主人公のメイはナギサさんを最初「おじさん(いい意味ではないほう)」と呼んでいたけれど、自分の中にある差別的な感覚を反省し、ナギサさんと特別な絆をはぐくんでいく。つまり、男女間の性差別や、雇用関係を超えた信頼。

    それが今回、田所と薫というキャラをナギサさんに向き合わせることで、もう1回差別的な部分に立ち戻る。田所は「おじさん(いい意味ではないほう)」とナギサさんに失礼な発言をしてしまう。今までとは異なり、同性による差別までも描かれるわけだ。

    そして薫も「おじさん(いい意味ではないほう)」と呼び、さらにナギサさんを「使う」ような態度をとる。これは、シーズン序盤のメイをオーバーラップさせると同時に、金銭による使役というちょっとシリアスな要素も感じさせる。

    ただ非常に上手いなと感じたのは、これらを意識的に配置しているということ。今回はいわば田所と薫が「憎まれ役」になることで、メイとナギサさんの絆を引き立たせる関係性になっているわけだ。そして、メイのこのセリフが秀逸。「私のもう一人のお母さんなの」。この言葉は彼女にしか言えないものだし、視聴者の中にもやもやと浮かびそうな「ムムム…」という感情の緩衝材でもある。

    他人はナギサさんの外見だけを見てカテゴライズしてラベリングして、差別する。でも内面を知れば、そんな考えはなくなる。田所も薫も結果的には自分の非を認める形になっていて、そこも「敵を作らない」本作の良さが感じられる。それに、この感覚は「家事が苦手で汚部屋に住んでる」田所にも通じる。彼は彼で「外見と中身のギャップ」に苦しんでいる人間だからだ。

    …とここまできれいにまとまったところで、最終回はもうひと波乱起こりそうな予感がプンプン。ここに恋愛が絡むとどうなるのか…? 社会的なテーマに真摯に向き合う本作は、最終的にどんな答えを下すのか。楽しみに見届けたい。
  • MIU404

    4.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    或る一つの違和感。

    『MIU404』が面白い。それは、言うまでもない事実だろう。毎週トレンド入りし、8週連続で視聴率2桁をキープ。第9話では、菅田将暉演じる悪役・久住が狂気を垣間見せ、大いに話題になった。クライマッ... 続きを読む 『MIU404』が面白い。それは、言うまでもない事実だろう。毎週トレンド入りし、8週連続で視聴率2桁をキープ。第9話では、菅田将暉演じる悪役・久住が狂気を垣間見せ、大いに話題になった。クライマックスに向けて、どのような物語が紡がれていくのか、気になるところだ。

    しかしこの作品、慣れ親しんだドラマと何かが違う。なんだろうな…と考えていて、ふっと思い至ったことがあったので、ここに書き記しておきたい。ちなみにこれは、作品の否定などでは一切ないので、安心してほしい。

    国内のテレビドラマには、ものすごく大雑把に言って、ある型がある。それは、枠によって尺が決まっているということ。30分もの・1時間もの…といったように。実際にはCMが入ったりするため、それより短いのだが。

    そしてまた、各話が始まる前には、「これまでのあらすじ」として「アバンタイトル」が入る。続き物なので、これがあることで前回を振り返ることができ、非常にありがたい。

    ただ、『MIU404』においては、この「前回はこうでした」がほぼ入らない。「基本的に1話完結」であり、前回から物語が引っ張る場合は(第9話のように)ちゃんと入るのだが、それも最小限にとどめられている。

    また、『MIU404』の異質な部分は、他にもある。わかりやすいところでいうと、「移動時間」があまり描かれないのだ。家を出た志摩が、次のカットでは離れた場所にいる伊吹のもとに着いているシーンなど、合間の時間をばっさりカットしている。加えて、1つ1つのシーンに、次につなげるような「残し(余韻・余白)」をほぼ入れない。端的に言うと、テンポが早いだけでなく、各シーンが非常に短いのだ。

    今期のドラマをざっと見渡してみても、やはりかなり異質。ある種ダイジェスト的に進め、間の部分は視聴者の想像力で補完させるような構成は、ある意味でとてもスマホ感覚に近く、スワイプ的だ。つまり、物語が映像として連続しているのではなく、各パートが“連結”しているような風合い。

    そしてこの構造は、例えば第8話の“泣かせ”のシーンを緩やかに描くようなオーソドックスな演出が入ることで、より際立つ。つまり、1話の中で、テンポにかなり差がある。これが、個人的に違和感を覚えた理由のような気がするのだ。

    正直、なぜこのようなつくりになっているのか、まだ調査と思案が足りず、答えは見いだせていない。最終話まで観たら、わかるのかもしれない。ただいずれにせよ、画期的であるのは確かだ。
  • リトル・ヴォイス

    5.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    心にしみわたる音楽ドラマ

    予告編を観て「ああ、好きそうだ」と感じて第1話を観てみたら、めっちゃよかった。Apple TV+は他の配信サービスに加えて少数精鋭で、『サーヴァント ターナー家の子守』や『ジェイコブを守るため』... 続きを読む 予告編を観て「ああ、好きそうだ」と感じて第1話を観てみたら、めっちゃよかった。Apple TV+は他の配信サービスに加えて少数精鋭で、『サーヴァント ターナー家の子守』や『ジェイコブを守るため』『ザ・モーニングショー』といった優れたオリジナル作品が多い。

    今回の『リトル・ヴォイス』は、ミュージシャンの女性を主人公にした青春物語。過去に誹謗中傷を受けたことから、自作の曲を人前で歌えないベス。「自分には才能がないのではないか」という不安を抱えながら、それでも音楽への情熱は隠せず……。犬の散歩のバイトや、音楽バーのバーテン、カバー曲を歌う仕事を行いながら、“何者か”になろうとする彼女の姿が描かれる。

    目にするもの全部が音楽に繋がっていて、どうしようもなく歌詞や音楽が頭に鳴り響く。そこに、才能のあるなしは関係ない。『リトル・ヴォイス』はそういった「作り手のリアル」をエモーショナルに描いていて、1話を観ただけなのに非常にグッと来てしまった。

    彼女の周りにいる人々も、個性的だが愛にあふれていて温かい。レンタルルームの“お隣さん”やルームメイト、バイト先の同僚、愛すべきワンコたち。手厳しいなかでも優しい父親、ちょっと手のかかる兄。気難しいベスに根気よくついてきてくれるバンド仲間。彼らの応援を受けて、ベスは少しずつ、自分のコンプレックスを克服しようと努めていく。もちろんそこには試練もあるのだけど、等身大の奮闘が見ていて気持ちがいい。

    そしてやはり、音楽が素晴らしい。冒頭からエモーショナルな曲が語り掛けるように流れ、ベスが街中で見かける音楽の数々が、耳に心地よく響き渡る。『はじまりのうた』や『カセットテープ・ダイアリーズ』など、音楽をテーマにした作品は傑作が多いが、『リトル・ヴォイス』も心に沁みる作品といえるだろう。

    ちなみに本作、グラミー賞を受賞したシンガーソングライター、サラ・バレリスが製作総指揮。道理で音楽が素晴らしいわけだ……。

    調べたら、監督・脚本は『アイ・アム・サム』のジェシー・ネルソン。製作総指揮はJ・J・エイブラムス。Apple TVはクリエイター重視の作品作りを標榜しているから、なるほどなという人選だ。まだあくまで1話を観た段階だけれど、心が高揚するような素晴らしさに満ちていた。

    1話約30分と気軽に観られるので、ご興味のある方はぜひ。
  • 贖罪

    5.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    何年経っても強烈に残る

    個人的に、何年経っても大好きなドラマだ。ただし、人に勧めていいものかは悩む。誤解を恐れずに言えば、観て楽しくなったりウキウキするものではない。むしろその逆で、心底嫌な気持ちになる人もいれば、ぞっ... 続きを読む 個人的に、何年経っても大好きなドラマだ。ただし、人に勧めていいものかは悩む。誤解を恐れずに言えば、観て楽しくなったりウキウキするものではない。むしろその逆で、心底嫌な気持ちになる人もいれば、ぞっとする人もいるだろう。ただ、1つ確かなことは、クオリティがめちゃくちゃ高い。

    それもそのはず、原作は湊かなえ、演出は黒沢清監督、出演は小泉今日子、蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴、香川照之。地上波のドラマではなかなか見られない映画畑のメンツが勢ぞろいしている。観るのに覚悟を要する作品ではあるが、そのぶんリターンも大きいのだ。

    小泉扮する主人公の娘が、何者かに殺害されるシーンから物語は幕を開ける。娘を殺した謎の男を見かけた友人4人は、主人公から「償いをしろ」と迫られるが、当時小学生だった彼女たちには何もできない。そして15年後、成長した4人それぞれに、恐るべき事件が起こる。全5話構成で、「主人公の娘を殺した犯人は?」という物語と、各話で蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴演じる4人の物語が並行して描かれていく。

    第1話は、蒼井優がメイン。事件によって男性恐怖症となった紗英(蒼井)は、優しい御曹司(森山未來)と結ばれるが、彼には恐るべき“裏の顔”があり……。ネタバレを避けるため詳細は書かないが、森山未來の演技が非常に怖い。そしてラストが壮絶だ。黒沢監督のじわじわ攻め立てるホラー演出も秀逸。

    第2話は、小池栄子がメイン。事件の際に何もできなかった無力感から自他に厳しく成長した真紀(小池)は小学校の教師になるが、ある日衝撃的な事件が起き……。「強くならなければならない」という一種の妄信状態に陥った小池の演技が、これまた怖い。

    第3話は、安藤サクラがメイン。事件のトラウマで引きこもりになった晶子(安藤)の元に、兄の幸司(加瀬亮)が妻と娘を連れて帰ってきた。しかし、幸司の娘の接し方がどうにもおかしい。そして……。このエピソードは、がらんとした舞台設定含めて常に不穏。加瀬の演技も絶妙に不気味で、安藤の怪演も心にさざ波を立てる。

    第4話は、池脇千鶴がメイン。事件の際、親身に接してくれた警官にあこがれを抱いた由佳(池脇)。その後彼女は、姉が警官と結婚したと聞き、嫉妬から姉の夫を誘惑するのだが……。このエピソードは、池脇の演技にぞっとさせられる。

    そして最終話の5話へとつながっていくのだが、まぁ各話全部が強烈。ショッキングなシーンは控えめだが、観る者を不安にさせたり居心地を悪くさせたり、或いは生理的に追い詰めたりといった描写が続く。しかし悔しいことに、冒頭にも述べた通り見ごたえがすさまじく、いまだにちょいちょい見返してしまう。

    もしご興味のある方は、怖いもの見たさ感覚でぜひ。
  • アウトブレイク 感染拡大

    4.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    コロナ禍でブレイクした新作ドラマ

    新型コロナウイルスの影響で、注目されている作品がいくつかある。代表的なものは映画『コンテイジョン』だろう。2011年に作られた作品ながら、今の世界の状態を予見していたような衝撃的な内容で、鑑賞者... 続きを読む 新型コロナウイルスの影響で、注目されている作品がいくつかある。代表的なものは映画『コンテイジョン』だろう。2011年に作られた作品ながら、今の世界の状態を予見していたような衝撃的な内容で、鑑賞者が急増した。

    今回ご紹介する『アウトブレイク』もまた、いま注目されているドラマだ。コロナ禍に突入する直前、今年の1月にカナダで放送され、観る者を戦慄させたという。その勢いのまま、日本でも7月からデジタル配信が始まった。「ちょっとお試し」な感じで1・2話を観てみたのだが、なるほどこれは恐ろしい……。

    本作のあらすじを簡単に説明すると、未知のウイルスが蔓延し、カナダがパニックに陥るという物語。パンデミックものは大体こういう流れになっていて「原因がわからない」「対処法がわからない」恐怖が描かれるのだが、本作はドラマということもあって、ペースが緩やかだ。それがゆえに、足元から恐怖がひたひたと忍び寄ってくるようなじっとりした作品になっている。

    各話のタイトルが「感染●日目」になっているのも、ぞっとさせられるポイント。冒頭は「2日目」から始まるのだが、急速に広がる・同時多発的に感染するのではなく、農場で飼育されているフェレットが発病(なのか?という疑問も込みで)したことから、飼育者や購入者にじわじわと症状が出始め、彼らが感染者を増やし……という風に、一人また一人感染していく(しかも割とみんなマスクをしない。そういう意味でも観ていると戦慄させられる)。

    そこに、「主人公の夫の不倫問題」や「故郷から離れてホームレス化した患者」といったシリアスなドラマが絡んでいき、さらに感染も拡大していくわけで、どんどん大変なことに。主人公は感染症のスペシャリストだが、食中毒が発生した老人ホームを訪れた際に「夫が不倫している?」という疑惑でぼうっとしてしまい、上の空の状態で答えた内容が「事実」として報道されて風評被害を引き起こしてしまったり、現代的な「怖さ」もはらんでいる。

    まだ1・2話を観た段階だけれど、この作品が話題になる理由は十二分に伝わってきた。やっぱり今は不安定な時で、心の平穏を保つために「現実とリンクしない作品を観る」のも大切だと思う。同時に、心に余裕がある方は「現実とリンクする作品をあえて観てみる」とことさら突き刺さる部分があり、これもまた映画やドラマを観る際の醍醐味といえるのかもしれない。
  • 恋ノチカラ

    5.0
    • 出演者
    • ストーリー
    • 演技
    • 映像

    昔も今も、ずっと好きな作品



    大人になっても、忘れられないドラマがある。それは個々人によって違うだろう。それぞれの思い出と結びついていて、場合によっては人格形成の礎になっていたりもする。子どもながらにグッとくる何かが...
    続きを読む

    大人になっても、忘れられないドラマがある。それは個々人によって違うだろう。それぞれの思い出と結びついていて、場合によっては人格形成の礎になっていたりもする。子どもながらにグッとくる何かがあったということで、意外と今見返しても、「いい!」となることが多い。

    自分にとって『恋ノチカラ』は、そういう作品だ。2002年に放送された本作を観たとき、まだ中学生。『やまとなでしこ』の面々だ!とか、そういった予備知識は特になく、おそらく「『踊る大捜査線』の深津絵里さんが主演」ということくらいしかわかっていなかったと思う。そのころの自分は家族でドラマを見ていたから、そもそも選択肢などなかったのかもしれない。

    だがこのドラマに、大いにハマった。恋愛もよくわからないのに、なぜ今日に至るまで大切な作品なのか――そこについて考えてみると、やはり「作り手が主人公の作品」というのがあるかと思う。本作は、独立して会社を立ち上げたクリエイターたちの物語だ。ベースは恋愛ドラマだけど、作り手の意地とか、ものづくりへの情熱がちゃんと描かれている。堤真一さん演じるクリエイターが、不器用ながらも良いものを作ろうとまい進する姿に、子どもながらにいいなぁと思ったのかもしれない。

    というのも、父母共にクリエイターという環境に育って、自分もそっちの方向に行きたいなとなんとなく思っていたから。営業に行ったり接待したりと、今観ると「大変そうだな……」という気持ちにはなれど、それでも自分の意志を貫いて、仲間たちとクリエイティブを志向する姿は、一種の「夢をかなえた姿」として映った。そして今、ライターになってからは、ますますこのドラマが大切な存在になった。缶コーヒーやエンピツネズミなど、自分がデザインした商品が世に出るという喜びと責任が、よりわかるようになってきたからだ。

    そしてまた今観ると、かつてはクリエイティブにいた(仕事上の失敗で現在は庶務課に移動)30歳のOLが、勘違いでベンチャー企業に移籍し、そこで粉骨砕身頑張る(恋もする)という物語に、違った共感を覚える。ある程度社会人経験を積んだ今の感覚で観ても、十二分に面白い作品なのだ。恐らく、当時のターゲットというのは主人公と同世代だっただろうから、成長して同じ目線で楽しめるというのも、非常にお得感がある。

    転職の大変さや将来の不安やキャリアプランにライフプラン……その辺りが感覚としてわかってくると、恋愛の比重がまた変わってくる。主人公が「恋にまっしぐら」になれないところに、当時は「優しい性格なんだな」と思っていたものが、それだけではないと気づかされたり。そういった意味でも、これからも末永く付き合っていくのだろうなと思う。

    1つ好きなシーンがある。ヒロインにとっての理想のデートは、ファミレスで深夜まで語り明かすこと。あの良さが、今になってめちゃくちゃわかるようになった。本当に好きな人とは、そういう時間を過ごしたくなるものだ(別のシーンだけど、深津絵里さんがイカスミパスタを食べて歯が真っ黒になるシーンもすごく覚えている)。自分の中でも、恋愛における大切な指標になった。

    恋愛観も、仕事観も、教えてくれた大切な作品だ。
評価をする