『俺の家の話』は、ジャニーズ事務所退所を控えた長瀬智也さんにとって、最後の花道になるかもしれない作品。その脚本を盟友・宮藤官九郎さんが手掛ける。となれば、見届けないわけにはいかない。
本作は、ずばり介護の話だ。能楽師の家を飛び出し、プロレスラーになった主人公が、父親が倒れたと聞いて実家に駆け付ける。父親の介護をしながら、同時に跡継ぎとしても奮闘し……という物語。『ゆとりですがなにか』などでもコメディの中に社会的なテーマやシリアスな内容を盛り込んできた宮藤さんらしい作品と言えるだろう。同時に、「主人公の再出発」を描く物語は、長瀬さん自身とも重なる。
主人公の父を演じるのは、西田敏行さん。弟妹には、永山絢斗さんと江口のりこさんが扮する。桐谷健太さんが幼なじみの内弟子役、戸田恵梨香さんが主人公の父親の再婚相手として登場し、キャスティングが絶妙だ(全員、シリアスもコミカルもこなせる演技派たち)。そこに長瀬さんの一本気な演技が加わり、やり取りを観ているだけでも楽しい作品になっている。
1話を観た感じだと、「介護」というテーマに「父子の和解」「再出発」といったドラマ要素が絡み合い、そこに「再婚相手は後妻業の女?」というフックもあって、続きを見たくなる仕掛けがたくさん施してあった。これは様々な考え方があるだろうけれど、テレビドラマで重視されるのは、視聴者に「好かれる」こと。
好かれるためには、「面白さ」「わかりやすさ」「とっつきやすさ」……。多くの選択肢があって、キャスティングに最も力を入れる場合もあれば、著名な脚本家で引っ張る場合もある。どこに届けるかによって、取捨選択が行われる。逆に言えば、座組をそろえたうえで「挑戦する」こともできる。
本作はまさにそうで、「介護」や「学習障害」という真摯に向き合うべきテーマを地上波のドラマで取り入れつつ、全体のトーンを明るくデザインし、刺すべきところで刺すつくりになっている。「構造」と「見せ方」がすごく練られた作品だと感じた。