『姉ちゃんの恋人』を観ていると、ニヤニヤしてしまう。そこにはいくつか理由があると思う。1つは、恋の楽しさをいくつものパターンで描いているところ。もう1つは、俳優陣の表情の豊かさだ。
言うまでもなく、不安が渦巻いている時代だ。新型コロナウイルスは、私たちの生活を根本から変えてしまっただけでなく、たとえ感染しなくても、心を蝕んでいる。ネットを開くのが怖い、SNSが恐ろしいという思い、ありませんか…? 僕はあります。これまで以上に、他者が使う言葉が攻撃的に感じる。苦難の中で、こちら側の防御力が弱まっていることもあるから、余計に。
そういう状況もあってか、『姉ちゃんの恋人』を観たときに、コロナ以前に比べて、より沁みる瞬間が増えたというか。人が人を好きになって、一喜一憂する。それだけでいいんだよ、それって素晴らしいもの。と思う。
第5話は、始まってすぐの藤木直人さん×小池栄子さんの舌だし「Q」ポーズ、照れまくる奈緒さん、林遣都さんの笑顔、有村架純さんのノリツッコミ&弟たちとのわちゃわちゃが観られる。そうか、この作品は絆のドラマなんだと改めて感じた。
もちろん、林遣都さん演じるキャラクターが背負う過去は、めちゃくちゃ重い。その部分を考えると、安穏と観ることはできないかもしれない。ただ、やっぱりこの作品においてのウェイトは、優しさにあるように思う。例えば映画『しゃぼん玉』においては「赦し」がメインテーマだったけれど、本作は群像劇の構造もあって、恐らく意図的に、重くなりすぎないように調整している。プラス有村さん、林さん、奈緒さんなど演技達者な面々がそろっているからこそ、彼らの生き生きとした表情を観ているだけで、こっちの表情筋も緩むというか。思えばこの頃、自分はぐっと堪えてばかりだったよな……なんて思ったりするのだ。
全体的なセリフは、多少説明過多な部分はある。多分人間は、ここまで自分の気持ち全部を話さない(これはわかりやすさを求められるドラマという形態も大きいのかなとは思う)。そういう意味では僕たちが過ごす日常とは完全に合致しないのだけど、そのぶん「これだけ他者と感情を共有できたらいいよなぁ」とも思うし、同時に、セリフと闘う役者陣の演技が引き立つ部分もあって、より皆さんの力量が際立つというか。セリフが立ちすぎないように、生の身体性をもたらそうとする役者陣の演技(リアルの方向に引っ張ろうとする奮闘)が見えてくるから、面白い。