2021年1月クールのドラマは期待作が多いなぁという印象だったけれど、その中でも「どこまでやってくれるんだろうか」と気になっていたのが、この『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』。ネットにおける誹謗中傷をテーマにした刑事サスペンスだ。
まず、この「指殺人」というタイトル。読んで字のごとく、指で行う文字入力で、他者を傷つけ、殺人にまで追いやってしまうこと。韓国等で話題を集めた造語だと記憶しているが、この言葉をタイトルにまで持ってきたところに、作り手の強い覚悟を感じる。自分が罪悪感なく発した言葉が、人を傷つけ、死に追いやってしまう危険性があるということ。タイトル自体が、警鐘になっているのだ。
今日的なテーマと反比例するように、ドラマの作り自体はオーソドックス。過去のトラウマを抱えるアウトローの刑事、配属されたばかりの正義感が強い新人、中堅どころに男女を一人ずつ配置して、振り回される上司がいる。刑事ドラマの鉄板といえる5人構成だ。
ストーリーも非常にわかりやすく、容疑者は最初から多少絞られていて(山中祟さんの演技が流石)、どう追い詰めていくか、というものになっている。アノニマス(匿名の人物)をどう特定していくか、というよりも、どうやって罪に問うか、罪の意識を感じさせるか、という難しさに比重をかけた印象だ。このあたり、「誹謗中傷の罪を立証する難しさ」という現実問題とリンクしているように感じる。
ただ、やっぱり現在進行形の社会問題でもあるため、多少の試行錯誤を感じたのは事実だ。新設された部署という設定ではあれど、一昔前の(ドラマの中での)探偵事務所のような照明から何からやたらカッコいい倉庫なのは本作のテーマである「現実」から見ると、やや飛躍している。
多少のネタバレになってしまい恐縮だが、第1話の最終的な帰結も、アノニマスかというと多少ずらしていて、アノニマスを「装う」何かしらの接点がある人物という、従来の刑事ドラマの犯人像に沿うものになっていた。
誹謗中傷、ひいては指殺人の恐ろしさは、ファンでもなければ身内でもない「接点が限りなく希薄な人物」が、たった一つの投稿で相手の精神を破壊するところにあるように思う(周囲の人物がアノニマスを装うという物語ももちろんゾッとするのだが)。その部分を、刑事ドラマの枠にどう当てはめていくのか。今後の展開が気になるところだ。