※スピンオフ作『アノニマチュ!』の感想です
動画配信サービスが隆盛し、本編はテレビで、サブストーリー(スピンオフ)は配信サービスで、という流れが一般化してきた。ParaviしかりHuluしかり、サブキャラクター(若手役者が多い)をメインに据えた物語が展開する。
『アノニマス』のスピンオフである『アノニマチュ!』は、清水尋也さん演じる刑事、四宮を主人公にした物語。本編は、ネット上の誹謗中傷が巻き起こす事件を解決しようとするサスペンスが展開するが、こちらは『恋の指相撲対策室』のサブタイトルが示す通り、がっつりラブコメに振っている。
毎話依頼人が四宮の元を訪れ、ネットにまつわるトラブルを相談してくる、という内容だが、基本的にギャグ満載。真面目な本編に対し、遊びまくったスピンオフ。これを観ているのと観ていないのでは、本編の印象がだいぶ変わりそうだ(というか実際、結構変わる)。
ちなみに『アノニマチュ!』では、「『アノニマス』本編と微妙に設定が違います」という注意書きがなされている。つまり、スピンオフでありながら、本人たちが出演しているパロディの意味合いが強い。これはなかなか特異な流れであり、両作品が補完関係に無いということだ。設定を本編と変えてしまったら、両作品をつなげたときに破綻してしまう。となるとこの作品は、ある種の二次創作的な位置づけであり、おまけ的なものといえよう。ただ、これを公式でやってしまうことで、観る側は結構混乱してしまうかもしれない。
『アノニマス』という作品のキャラクターには、こんなにも可能性があるのだ、ということを示した好例でありつつ、視聴者層がほぼ本編を観ている人たちと考えると、「本編と微妙に設定が違う」が何とも複雑なねじれ具合を生み出している本作。とはいえ、「ドラマのスピンオフ」というくくりで見た際に、挑戦的・野心的なものであることは確かだ。