【全体感想】
苦しみを描いてるのに、ほっこり温かく、微笑ましくなれる会話劇。哀愁漂うポップな仕上がり。
やっぱり野木亜紀子脚本と山下敦弘演出の安定感は半端じゃない。
各回1つの何かからくる苦しみをテーマに物語が成されていくわけだが、苦しみがテーマになりながらも重くはなく、とはいえ日常に潜むテーマに切り込んでないわけでもなく、かなり絶妙なタッチで見やすさと見応えを共存させられてるドラマである。
苦しみも自分の中にあるかけがえのない一つの側面であり、人の味わい深さを作るものとしてあくまでポジティブに描かれている。
回が増すごとに、誰かにスポットライトが当てられているような苦しみから誰もに共通する苦しみがテーマになっていく話の運び方もとても好き。
真面目すぎて融通が効かない兄一路と適当すぎて妻に愛想を尽かされてる二路が、レンタルおやじとなって、様々な人たちの相談事を解決していく。
両極端の性格だからこそ噛み合わないところも噛み合うところもあって、不完全さが逆に味になっている描かれ方が本当に微笑ましくて、それをこれでもかというくらいに体現してる古舘寛治と滝藤賢一が素晴らしすぎる。
2人とも本当に役幅広いですよね!
そして毎回女神のように絶妙に2人の中に入り込んでくるさっちゃん。
ここに芳根京子という最高のキャスティング。
抜けてそうでしっかりしている人柄が物凄くハマっていて、コタキ兄弟に迎合もできちゃうし、かたやでさっちゃんの方がしっかりしている感じも出せている。
コタキ兄弟だけでもおもしろいのはおもしろいけど、さっちゃんが入ることでさらにおもしろみが増して、時に物語が締まる役割も担っている。
そして1話完結のドラマでありながら、裏で徐々に色んな関係性が露わになっていき、予想外な繋がりが生まれていく展開も、『アンナチュラル』っぽくて抜け目がないなーという感じ。
さっちゃんがまさかの生き別れの妹だったなんて予想できませんでした。笑
深夜ドラマだからこそなのかもしれないが、肩の力を抜いて本当に気楽に観られてちょっとばかり心に残るものもある。
野木亜紀子さんは骨太さだけじゃなく、こんなゆるーく共感を得ながら考えさせる物語も作ることができるんですね。
山下敦弘監督は逆に得意分野な気がするので、もう2人が揃うとさすがって感じです!
とにかく週に1回ずっと観続けていたい作品で、時間も30分くらいがちょうどよくて、枠といい本当に全てが絶妙なところをついてきてる作品だなと思う。
少し考えさせられて温かくクスッと笑える。
肩の荷を下ろしたいときにずっと観ていたい。
オープニングも結構好き!本当に終わって欲しくない!
【11話感想】
今までの話でも十二分に傑作であったわけだが、11話は今までの回を凌いでいく神回であった。
LGBTを題材とする11話は今までの一路と二路の描写があったからこそ、さっちゃんのレズビアンに対しての意見が異なることへの説得力もある。
十分に理解していないことから放たれる発言がいかに相手を傷つけてしまうかについて考えさせられる回であった。
一路は知識・思考のアップデートがなされていないことによるデリカシーのない発言で、さっちゃんを傷つけてしまう。
今までの一路を見るに、さっちゃんのためを思っての発言であったのに、理解していないがゆえに浅はかな発言をしてしまったのだ。
それにより一路はLGBTのことを勉強して、行った発言に対しての愚かさを知ることになり、二路とまたさっちゃんとその恋人にとっての幸せを考え一念発起する。
そこからが更なる感動を生み出していく。
人は自分以外を生きることはできない。
自分で生まれてきたからには自分自身で生きていくしかないのだ。
でもそれでいいし、それがいいという世の中への宣戦布告でもあった。
「あなたが、あなたたちが、あなたとして、生きていくことを、俺は祝福する」
これは一路が自分自身へ向けたメッセージでもあるような気がした。
今までの一路を見てきたからこそ重みがある。
誰に何と言われても、悪いことをしているわけではないのだから、あなたはあなたで生きていこう。
LGBTの方のみならず、多くのマイノリティを感じている人が救われたはずだ。
芳根京子の11話の演技、本当に素晴らしかったです。
改めてさっちゃんが芳根京子でよかった!