事件が起こる、人が死ぬ。事件ドラマと医療ドラマにあふれた2020年冬クールの中で、異彩を放つ“おじさんドラマ”が週末の深夜に控えている。普通の頻度でドラマを見ている人のことはわからないが、ドラマ好きの中で『コタキ兄弟と四苦八苦』を見過ごす人はいないと思う。『アンナチュラル』や『逃げるは恥だが役に立つ』の脚本を担当した野木亜紀子のオリジナル作品で、『天然コケッコー』や『深夜食堂』シリーズの山下敦弘が監督を務めている。
前回、事故でケガを負わせてしまったムラタさん(宮藤官九郎)に導かれるまま、神経質な兄(古舘寛治)とチャランポランな弟(滝藤賢一)は“レンタルおじさん”になった。実質無職なおじさん兄弟は、今回も時給1000円で駆り出される。第二話の依頼は、依頼人の結婚式に親戚のおじさんとして出席すること(サクラ)。“レンタルおじさん”が請け負う仕事の幅の広さを改めて感じた。
「結婚式なんて笑って踊ってりゃいいんだって」とノリノリの弟に対し、「私たちをレンタルしたのはどういう経緯で……?」と新郎に詰め寄る兄。だけど実は……?この依頼の真相が明かされて、物語は一気に加速する。初回ゲストの市川実日子に続き、第二話のゲスト・岸井ゆきのが絶妙。主役のコタキ兄弟を演じる古舘寛治と滝藤賢一は、言うまでもなく最ッッッッ高です。
適当で柔軟で物腰が柔らかい弟に対し、硬派で融通が利かない昭和気質の兄には一種の「生きづらさ」を感じるかもしれない。前回に続き、物事を真正面からしか見ない兄が、面食らう出来事が今回も起こる。しかし、今作は時代の波に乗れない兄の生き方を否定しない。わたし間違ってますか?と聞く新婦に対し、兄は「うーん、弟なら『間違ってないよー』って言うんだろうけど……」と困ったように返す。「無理に言わなくていいです」と微笑む新婦。今作が持つ温かさを感じると同時に、やっぱりこの作品めちゃくちゃ好き……と思うシーンだった。
『コタキ兄弟と四苦八苦』では、四字熟語を用いたタイトルが付けられる。第二話は「求不得苦」。求めるものが得られない苦しみ。なるほど、なるほど……と、エンディング後に言葉の意味を噛みしめていた。