シノさんに恋する成瀬を支えようと決めた春田と、初めての失恋を経験した成瀬、成瀬からの想いを受け止められないシノさん。ちぐはぐなベクトルが行き交う三角関係の物語も、終盤が近づき、展開がめまぐるしく動き出してきた。

「好きだから欲しい」という激しい恋心から、「好きな人に幸せになってほしい」という優しい愛情に昇華した、春田の成瀬への想い。成瀬を心配して見守る春田の目は、穏やかで温かい。成瀬を諦めたわけではなく、好きであることは変わってないけど、嫉妬に狂ったり、自分の一方的な気持ちを押しつけたり、改めて告白することも、もうしない。恋を経験して愛を知った彼の姿には心を打たれた。

一方で、シノさんへの恋は悲しくも叶わなかった成瀬。「シノさんの成瀬への態度が冷たすぎる」「シノさんの変貌が受け入れられない」などという意見を見たが、想いに応える気がまったくないのに、中途半端に優しくするほうがひどいと私は思う。
ひなちゃんが春田に向けた「その優しさに私は傷つきました」という言葉。まさしくその通り。期待を持たせてしまうようなその場限りの優しさなんていらない。あの冷酷さは、成瀬のためを思ったシノさんなりの優しさにしか見えない。弟のように、かわいがっている子を相手に怒鳴るなんて、シノさんも心張り裂ける想いだったはず。もちろん成瀬もショックを受けたけど、シノさんもつらかっただろう。彼は、好きな人に振られるという失恋の痛みを知っているから。ふたりの姿が痛々しすぎて、このシーンは見返すことができない。
でも本当に、シノさんはハッキリと成瀬を振ってくれて良かったと思う。これで成瀬も叶わぬ恋を引きずることなく、先へ進めるから。

ラスト、公園での春田と成瀬。普通、自分の好きな人が失恋したと知ったら「俺ならおまえを泣かせたりしない」みたいなことを言って抱きしめる展開になりそうだけど、春田はそんなことはしなかった。泣きじゃくる成瀬の話を聞いてあげて、一緒の場所に「帰ろ」と手を引いた春田。繋いだふたりの手と手、イルミネーションデートの際はパッと離れたのに、寮に着いた時は成瀬の手が名残惜しそうだった様子が印象的だった。
以前からずっと傍で優しく見守ってくれていた春田の存在が、自分にとっていかに大切かを、成瀬はここでようやく気づいただろうか。

獅子丸が会社の改革だなんだといろいろと動いていたが、これはストーリー上、絶対に必要なエピソードには思えなかった。もしかして、公式が以前謳っていた「獅子丸の真の目的」とやらは、このことだけ？
「お仕事ドラマ」という側面も見せたいがために、むりやり獅子丸というキャラクターをねじこんできたようにしか見えず、売上目標がどうのとか、お客様感謝イベントとか、すべてチープ感に溢れていたことが残念。
武蔵が暴漢に襲われる(というほど派手なシーンでもなかったが)のも、取って付けたような感じで、興ざめした。
獅子丸の存在が、期待していたほど驚くようなものでもなく、途中からわざわざ出演させてきた意味が、今回は伝わってこなかった。次回、もっと重要な役どころとして(例えば、春田と成瀬が結ばれるために、助言したり背中を押す)活躍してくれればいいけど。

このドラマはひとつの作品として本当にすばらしいので、もうS1と比べる意味もないし、比べる対象にすらなっていないと思っているが、あえてひとつ、S1との大きな違いを書くとするなら、「春田創一という人物」。
このドラマの中の彼に優順不断さはなく、周囲に振り回されることも流されることもない。恋愛感情のない相手(武蔵、シノさん、ひなちゃん)にはハッキリとNoを突きつけ、自分が本当に大切な相手(成瀬)へは、恋という気持ちを通り越した、愛とも呼べる感情を抱き、彼を優しく大きな温かさで包み込む。この「春田創一」という魅力的なキャラクターを描いてくれた制作側と、演じてくれた田中圭さんには、ただただ感謝という言葉しか見つからない。