今回のテーマは「春田の想いの行先と嫉妬と戸惑い」
春田の心がとても目まぐるしく動いた回だった。
私が今回、印象的だったのは、春田自身より先に、彼の中に芽生え始めた恋心に「ずっと見てたら分かるよ」と気づいたひなちゃんの、泣き笑いの表情。
デートする、イコール、恋愛対象として好意を持たれている、と、ひなちゃんはそう期待していたはず。私も、春田がひなちゃんと出かける計画を立てている光景を見て、春田は成瀬だけではなく、彼女に対しても心が揺れているのかな、と思っていた。
ところが、彼は自分のことなどまるで眼中にない、ということにひなちゃんは気づいてしまう。「その優しさに私は傷つきました」という言葉に、私は首がもげるほど頷いた。好意を持たれていることを知っているのに、相手が期待してしまう(気を持たせる)行動を取るのって、本当に最低。S1で、春田がちずを抱きしめた(けど想いに応える気はない)のと似ている。
しかし、「好きじゃないでしょ、私のこと」とひなちゃんに言われてハッとして、混乱しつつも(この時点では自分の気持ちがよく分かってなくても)、彼女に対して「ごめん」という言葉をちゃんと言えたことは良かった。この「ごめん」がないと、春田もひなちゃんも、いつまでも先に進めないから。
ひなちゃんの想いを受けとめることを心が自然と拒否した、このことがきっかけとなり、ここから春田は、今まで無意識にごまかし続けていた自分の気持ちに向き合い始めていったのだと思う。
成瀬がシノさんと笑い合う。成瀬がシノさんのことを話す。そのたびに心がかきむしられていく春田。烏丸さんに「それは嫉妬でしょ」と言われても「ないない」と否定し、ひなちゃんに「他に好きな人がいるの?」と訊かれても返答できず、ただ漠然と、自分の心の奥底の「何か」に翻弄され続ける。
成瀬の寝顔を見つめ、覗き込み、思わずその頬に触れようと手を伸ばす自分自身に驚いたり、成瀬がシノさんに向ける笑顔にモヤモヤし続けたり、そういった感情が蓄積され、心がめちゃくちゃに張り裂けそうになった瞬間、彼は自分の恋心に気づき、同時に暴走してしまう。
「成瀬が好きかも」という不確定な戸惑いと、「誰にも渡したくない」という激しい独占欲が混ざった春田の表情には、狂気さえ感じた。おそらく春田は、恋をする(誰かに想い焦がれる)のが、これが初めて。今まで経験したことのない感情をうまくコントロールできず、内側に暗い嫉妬の炎を静かに鬱積させていく春田。毎回、田中圭さんの演技には惚れぼれしているが、今回の、この春田の姿を演じきった彼の才能には、全力で拍手を送りたい。
テラスでのライトアップの演出も本当に素晴らしかった。春田の姿が、成瀬に向かって苦しげに自分の想いを吐露してる時は嫉妬の感情で赤く照らされ、強引にキスして突き飛ばされた途端、拒絶されたことへのショックと、キスしてしまったことへの後悔で青く照らされる。このドラマは本当に、こういった細かい演出が際立っていて、丁寧に作られているなと、いつも感心する。
春田の想いを受けつつも、成瀬はまるで自分の心を頑なに見せようとしない。春田に「おまえのことが好き」と言われても、返事をせずに逃げようとして、「俺じゃダメか」と言われてようやく「ダメです」と返答する成瀬。「他に好きな人がいる」とも言わず、春田の「好き」にも応えず、ただ「あなたではダメ」。むりやりキスしても心までは奪えず、直後に激しく苦悶する春田が、見ていて本当につらかった。
けど、成瀬に強引にキスをして、しかも最低な発言(誰とでも…というセリフ)を吐いてしまったことを後悔したかもしれないが、成瀬に想いを伝えたこと自体は、春田はけっして後悔していないと思う。
彼の想いが実る日は来るのか、それとも、叶わぬ想いは諦めて、他の人へ気持ちが移ってしまうのか…。いや、振られたから、ハイ、つぎ次の恋~、というのは、一般人なら(私も)普通にあるが、春田には似つかわしくない。「成瀬が好き」と確信した以上は、一度振られたくらいで、そう簡単に諦めないでほしい。もっと激しく拒絶されて、もう絶対に叶わないと悟る時が来るとするなら、その時まで彼はこの想いを徹底的に貫き続けてほしい。
家族に抱いていた長年の罪悪感が消えて、ようやく心が解放されたシノさんが、スッキリと脱皮したかのような、まさかのポジティブ人間に。「お試しで一週間!(笑)」、たった今、振られたというのに、彼はとっても明るくて、逆にその笑顔が痛々しく見えた。この「お試し」とは、「自分は春田には絶対に選んでもらえない」と分かった上での「一週間の交際の提案」なのだと思う。「諦めるからその前に、おまえとの想い出を俺にくれ」と。まさか、一週間後に春田が「俺、シノさんのこと好きになりました。シノさんとずっと付き合いたいです」なんて言うわけないと、シノさん自身が一番分かってるはず。ポジティブになったように見えて、やっぱり存在が切なすぎるシノさん。彼が本当に心の底からの幸せな笑顔を見せてくれる日はいつになるのだろう。
シノさんの「春田が好きだ。俺と付き合ってほしい」という告白。こんなにも「正当でまっすぐな告白」って、久しぶりに聞いた気がする。(少女漫画でもこういうの、最近は少ないのでは…) (S1でも牧くんが同じこと言ってたけど) こういうストレートで分かりやすい告白を、今度は春田の口からぜひ聞きたい。「おまえのこと好きみたいなんだよ」なんて曖昧なセリフではなく、春田はもう一度成瀬に、もっとはっきりとした言葉で、愛をぶつけてほしい。自分の気持ちに嘘をつかないと決めて、好きな人に正面から想いを伝えることができたシノさんのように。
私、前回の感想で「成瀬はシノさんに恋している」と書いたけど、繰り返しよくよく見ていると、どうやら違う気がする。成瀬がシノさんに抱いているのは、恋愛感情ではなく「父性愛」。父親からの愛情を知らずに育った成瀬が、身近にいる優しいシノさんに対して向けているのは、父親(または兄)へ向けるのと同じ愛。やはり成瀬は、本人が言っているように「本気で人を好きになったことがない」子。「経験がないから、春田さんからの想いをどう受けとめていいのか分からない」、そして「自分が春田さんと幸せになったら四宮さんが傷ついてしまう」、こういった気持ちが邪魔して、本心では春田に応えたいのに、彼とまともに向き合うことができず、成瀬も葛藤しているのでは、と思う。
シノさんの過去との邂逅と、止まったままだった彼の時間が未来へ向けてようやく動き出した様子が、涙なしには見れないほどに感動したので、今回は文句なしに星5つ!
春田の「はじめての嫉妬」も、田中圭さんの熱演により、とても心に響いた。
物語も折り返し地点を過ぎ、ゴールへと近づいてきた。「全員が幸せになる」エンドはなかなか難しいとは分かっているが、それでも私は、この物語の全員が、幸せをつかむことを願わずにはいられない。