前作のおっさんずラブを支持する熱狂的なファン(信者)たちからの激しい批判に晒されながら、ついにスタートした新作、おっさんずラブin the sky。

私も、この作品についての発表があった際には、まったく受け入れられずに相当荒れた。見よう、と決めてからも、前作が築いた世界観をぶち壊しするようなひどい内容だったらどうしよう、と不安を抱えていたが、オープニングと共に、そんな杞憂は空の彼方に吹っ飛んだ。
世界観も何も、そもそも世界が(というか職場)が、まったく違う。オープニングで、飛行機の機内でサムズアップして笑う青年は、不動産会社勤務の春田創一ではなく、航空会社のCAである春田創一である。同姓同名(珍しい名前だけど)の、顔もよく似た、そして、牧凌太という恋人などいない、まったく別人の春田創一だ。それがすとんと心に落ちた瞬間、私は自分の思っていた以上に快適に、このドラマの世界にすんなり入り込んでいくことができた。
困っている人を放っておけずに遅刻したり、職場から自分のデッサンが見つかったり、同僚の成瀬にいきなりキスをされたりと、初日から事件？がてんこ盛りで、前半のテンポの良さは軽快で秀逸だった。

前作と今作で違う(いい意味で)と感じたのは、武蔵の恋について。前作では、一番最初から「春田が好き」な武蔵だったけど、今作では、武蔵は春田のことを意識するところから始まり、ゆっくりと自分の恋心を自覚していく。こういう描き方のほうが、見ているこちらも武蔵に共感しやすいし、前作よりも、「武蔵を応援したい」という気持ちが強くなる。
「おっさんずラブという物語は、武蔵が春田に恋をしてフラれる物語だ」という、どなたかの発言を、何かの雑誌で読んだので、武蔵の恋の行方については正直いって見えてしまってはいるが、それでも、純粋で真っ直ぐな武蔵の恋は、今作でもわくわくドキドキしながら見守っていきたいと思う。

ラストシーンで、大量の春田のデッサンを撒き散らして叫んだシノさん。あれは武蔵の描いたものだと思い込んでいた私は、ここで「えーっ！」と声を上げた。それと同時に、寮での春田との食事の際に「(春田とキス)できるよ」と、冗談めかして言ったシノさんの笑顔が頭によぎった。自分の好きな人から、誰かからキスされたなどという報告を聞いて、シノさんは内心どんなに荒れたことだろう。けれど、そんな動揺など微塵も見せないあの笑顔。心温まる食事のシーンなのに、二回目に見た時には切なくて胸が苦しくなった。
けど、寮で春田とシノさんがキッチンでじゃれ合い、向かい合って仲良く食事する姿は、本当に大好きだ。この先もシノさんのバリエーション豊かな料理を、おいしそうに頬張る春田の笑顔と、そんな春田を見つめて微笑むシノさんをたくさん見たい。

私が今作で一番期待しているのは、「周りの人からベクトルを向けられまくる(愛される)春田」よりも「自分から積極的に誰かを愛する(片思いする)春田」。
春田が、成瀬かシノさん(または、ひなちゃん)の誰を愛するようになるのか、1話の段階ではまったく予想できないが、私の個人的希望だと、最終的には成瀬とハッピーエンドになってほしい。
成瀬からの突然のキスにより、ふたりの「何か」が始まる火蓋が切って落とされた。成瀬の秘密(性癖)を知ってしまった春田と、知られてしまった成瀬。ただの同僚であるふたりの関係が、今後どう発展していくのだろうか。笑顔を見せず、何らかの理由で心を閉ざしている成瀬に想いを向ける春田と、そんな春田からの無償の愛と太陽のような笑顔で、だんだんと鎧を脱いでいき、いつしか自然に笑うようになる成瀬、このふたりの恋の過程は大いに注目だ。
「夢中で人を愛し、悩み、嫉妬する」春田の姿を、ぜひ今作ではじっくり見れますように。

前作では「最初から春田は牧が好きだった」「春田の気持ちは牧と出会った時から牧以外にブレてなかった」など、放送後に発売された雑誌や公式本で、春田の心情が後付けされていて、「うんうん、言われてみれば確かにー！」と都合よく納得していたが、よくよく考えると、それらはあくまでも後付けに過ぎず、どんなにじっくり見ても、前作では春田の内面についてそこまで詳しく(分かりやすく)描かれてはいなかった。それを踏まえて、今作ではもっともっと細かく丁寧に、春田やその周りの人達の想いの変化が描かれることを期待したい。

あえて星を減らす理由が何もないほど、初回からすべてにおいて最高だったので、オール星5つ。