今回は紛うことなき「武蔵回」だった。絶叫して鐘を鳴らす告白はインパクト大でおもしろかったが、私としては「もう告白しちゃうのかぁ…」だった。
「春田を意識する→なんかドキドキする→気になって仕方ない→寝ても醒めても春田が好き→欲しくてたまらない→感情爆発 (告白)」この過程を、もう少しゆっくりじっくり見たかったから。
話数の関係で仕方ないだろうが、告白は3話くらいがよかったのでは、と思った。武蔵が男である春田に惹かれた理由がもっと分かる描写が、あとほんの少し欲しかった。
シノさんと武蔵の1対1の話し合い。「どうして気持ちを伝えないんだ?なぜだ?」と問い詰める武蔵と、「これ以上の関係を望んでいません」と答えるシノさん。同じ人を好きなのに、恋愛に対する姿勢がこのふたりはこうも違うのか、と、真剣な場面なのに笑ってしまった。
「想いを伝えたい。好きだから、春田が欲しい。春田と幸せになりたい」武蔵と、「想いはしまっておきたい。好きだから、春田が別の人(ひなちゃんや、他の女性)と幸せになることを望んでる」シノさん。「好きな人と共に人生を歩みたい」武蔵と、「好きな人の幸せを見守ることが自分の幸せ」なシノさん。まるで対照的だが、好きな人は同じであるふたり。愛にもいろいろな形がある。どちらも間違ってないし、どちらの春田に対する想いの大きさも同じ。(おそらく武蔵には、シノさんの愛し方は理解不能だろうけど) 「告白しないで後悔したくない」武蔵と、「告白して後悔したくない」シノさんが、今後どのように春田と向き合っていくのか。どちらも応援したい。
成瀬のパワハラ騒動。パイロットの資格剥奪、などと謳っていたので、もっと大事になるかと思いきや、意外にあっさり終わったので、やや拍子抜けした。懲戒会議でいっさい弁明しなかった成瀬の態度も疑問が残る。それが成瀬の性格だから、と言われればそれまでだが、社会人として、またパイロットという職を大切にしてる人間としては、あれは不自然すぎる態度に見えた。
けど、成瀬の仕事に対しての真摯な一面が、懲戒会議での春田やシノさんの発言から知ることができ、成瀬の人柄の一部(良い一面)が垣間見えたので、それはとても良かった。今後も成瀬の内面についてはもっと深く掘り下げてほしい。
今回は成瀬とシノさんの関係について、ほんの少し見えてきた。「好きなんですよね、あの人のこと。俺のことムカついてますか。キスしたんですよ、春田さんと」「あいつを弄ぶのはやめろ」といったこの一連の会話、私にはどうしても「お互いがゲイ(またはバイ)だと知っている上での会話」に聞こえてしまった。でないと、普通だったら「四宮さんて春田さん(男)のこと好きなんですか?(驚き)」「成瀬おまえ、あいつ(男)にキスしたの?(驚き)」みたいな会話になるのでは。
それと、成瀬の「キスしたんですよ」が「春田さんに」ではなく「春田さんと」だったことも引っかかった。春田さんと、では、まるで春田と合意の上でキスし合ったように聞こえる。わざとそういう言い方をして、シノさんの嫉妬を煽った(自分に気を引かせたくて)のかな、と深読みしてしまった。成瀬の気持ちはシノさんに向いているのかな。同僚同士という以上に、もっと深い関係(過去に何かあったとか)を感じさせる雰囲気が、あの短い会話とお互いの表情に詰まっていた。
ラストで発覚した、武蔵とひなちゃんの親子関係。これが分かった時、私は「春田が、武蔵orひなちゃんとくっつく可能性はなくなったな」と思った。武蔵(父
)はひなちゃん(娘)が大切だろうし、ひなちゃんも武蔵が大切。近いうち、お互いが春田へ抱いている想いを知る展開になるだろうし、そうなった場合、ふたりとも、大切な相手を傷つけてまで春田と付き合いたい、春田への愛を貫きたい、という思考にはならない気がする。
とはいえ、今回、ひなちゃんといい感じになってきた春田。前作と違い、今作はもしかしたら女の子とハッピーエンドになるのでは?という予想をたまに見るが、私はそれはないと思っている。女の子とくっつくラストだと、「おっさんずラブとは性別を超えて人を愛する物語」という、前作で築いたこのドラマの特色が生かされない(他の恋愛ドラマと大差なくなる)し、「結局、男と女がくっつくのが自然で当たり前」という結論になってしまう。ただ、男同士の恋愛物語に、女性の存在は必要不可欠。本来は性的嗜好は女性に向いている春田が、自分のそういった本質を無視して(というか白紙にして) 、男である成瀬かシノさんに惹かれていき、やがて愛するようになる過程。これを見れるワクワク感こそが、他のドラマにはない素晴らしさだ。
今回はパワハラ騒動の描き方が、やや雑というか早足に感じたので、少し星を減らしたけど、不満なんてまるでないに等しい。シャボン玉ふわふわ武蔵と絶叫告白武蔵のおかげで、全体的にコメディ色の強い明るい回だった。予告によると、次回は打って変わって、切なさMAXな雰囲気いっぱい。この緩急がたまらなく楽しい。本当に次回が待ち遠しい。