誰も幸せな顔をしてなかった。見ていて呼吸が苦しくなる回だった。
今回の春田の姿は、仕事中も、シノさんと交際してる様子も、成瀬に対する表情も、どれもが痛々しくて直視しがたかった。
春田が仕事の失敗を繰り返したり、風邪をひいているのに飛行機に乗務しようとするとか、それで無理して倒れてしまうという姿が、社会人としてちょっとありえないことの連続で(それだけ春田は精神的にきつい状態だったことは分かるけど)、ネコさんに怒鳴られるシーンは、こちらの胃が痛くなる。
そして一番見ていられなかったのは、成瀬がシノさんに放ったセリフと、シノさんを求める行動。
リピートできない、と思った回はこれが初めて。(リピートしたけど)
私、4話の感想で「成瀬はシノさんに恋してるように見える」と書き、5話の感想で「成瀬のシノさんへの気持ちは、やっぱ恋ではなく父性愛だな」と考えを改めたけど、まさかの、4話を見た時の直感が当たってしまった。シノさんに恋してるなんて。そんなの、完全にミスリードだと思ってたのに。成瀬、本当に、シノさんに恋してるなんて。春田に告白&キスされて、成瀬の心は春田に動いた(というか動いてほしい)と思っていたのに。
武蔵に「恋なんじゃないのか」と、シノさんへの想いの正体を指摘され、「え?え?」と戸惑う成瀬の姿が印象的だった。恋をしたことがないから、恋に気づいていなかった成瀬。そんな彼が初めて自分の中の恋心を自覚した瞬間。私も「え?え?」と声を上げてしまった。
成瀬と武蔵は「利害が一致している」と言いつつも、それで春田とシノさんを別れさせようと画策するようなことにはならず、安心した。てっきりそういう展開になるのかとヒヤヒヤしていたが、ふたりの性格を考えれば、そんな卑怯なことなどするはずはない。利害が一致してる→つらい片想いをしてる点が共通してる→バッティングセンターでモヤモヤを発散させに行こう、という流れになるふたりが、なんだかかわいかった。
バッティングセンターのベンチのシーン。武蔵がひなちゃんのことを春田に話し、シノさんが気まずそうな顔をし、そんなシノさんを成瀬が隣から見つめて、更にその横顔を春田が見ている。すべてのベクトルが一方通行。主題歌の歌詞が恐ろしく当てはまっていて、本当に胸が苦しくなる。
この火鍋とバッティングセンターの流れは、卓球の時のように、基本は切ないけど、幾分か気楽に楽しく見れる。武蔵の恋も真剣とは分かっているけど、彼が登場するだけでいつも笑える(ごめんなさい)。というか、武蔵のおかげで、物語全体に張り詰めてる緊張感が和む。今回は終盤が本当にシリアスで重苦しかったので、この武蔵のシーンがあって良かった。
シノさんが提案したお試し交際。結末は分かっていたけど、いざ終わりを迎えた時は本当につらかった。
振られるほうはもちろん、振るほうもつらい。「シノさんからの求愛を拒否したら今の友人関係までもが壊れてしまうかも、ということが怖くて、はっきりと拒否できなかった」という春田の気持ち、痛いほどよく分かった。
けど、そんな葛藤を乗り越えて、きちんとシノさんに向き合い、泣きながら「付き合えません」と告げた春田と、それを現実として受け入れたシノさん。「2%くらいは…」と、交際に発展する可能性を期待してたとシノさんは言ったけど、本当は2%も可能性がないことを彼は分かっていたと思う。
このふたりは今後も、友人同士として、いい関係を築いていってほしい。(振られた側であるシノさんのほうは、気持ちの切り替えに時間がかかるかもしれないけど)
成瀬に「シノさんとは付き合わないことにした」と報告した春田が、その次に言おうとして飲み込んだ言葉はなんだったのだろう。「シノさんはこれでフリーだから、おまえがんばれよ」と成瀬の背中を押すつもりだったのでは、という意見を見たが、私はちょっと違うかなと思った。「自分の好きな人(成瀬)の恋を応援する。成瀬がシノさんとうまくいって幸せになるのなら俺も幸せ」などという聖人君子のような考えに、春田はこの時点ではまだ到達していなかったのでは。予告を見ると、次回はそんな気持ち(成瀬を応援する)になるような感じだけど。でも、素直な感情としては、「好きだから欲しい」と求めるほうが自然。
春田はこの時、もう一度改めて、成瀬に告白するつもりだったように見えた。けど、先日、拒否されたばかりだし、成瀬がシノさんに向けている想いにも薄々気づいている。成瀬のその眼差しは自分を映していない。そんな彼の目を見て、もう一度、気持ちを伝える勇気が失せてしまったのではないだろうか。
大切な人(シノさん)の想いに応えられなかったことと、好きな人(成瀬)の心を手に入れられないこと。この現実に打ちのめされた春田が、あてもなく外をさまよい、獅子丸に抱きしめられて泣き出す姿は、本当に見ていられなかった。
「本気だよ」「あんたとしか(キス)したくない」という成瀬のセリフ。これに私は非常にショックを受けて転がりまくった。(これは春田に向けて言ってほしかったから…)
成瀬のシノさんへの恋は、芽生え始めたばかりなんてかわいいのものではなく、「俺が忘れさせてあげる」と、いきなり身体の関係を結ぼうとして抱きつくほどに、本人にも止められない大きな想いになっていた。今、好きな人に振られたばかりという精神状態で、思いがけない相手から激しい求愛を受けたシノさん、さぞ混乱したことだろう。シノさんは、大雨の夜に目撃したあの光景によって、春田の想い人が成瀬であることに気づいているはず。その成瀬が求める相手が、まさか自分だなんて。
私としては、シノさんは春田のことを思って、成瀬を全力で拒絶して「おまえが本当に好きなのは俺じゃないだろ」という感じで成瀬を諭して、そして成瀬も春田への想いに目覚める…という展開を望んでいるけれど、あそこまでシノさんを好きな成瀬の気持ちが、はたしてそう簡単に春田に向くのだろうか。
次回は、シノさんに片想いする成瀬のために春田が動くようだけど(イルミネーション擬似デート)、そこで成瀬の気持ちが揺れ動いてほしい。そうでないと春田が報われない。
成瀬の恋は絶対に叶うことはないから(シノさんが成瀬の気持ちに応えるはずないから)、成瀬はシノさんを諦めて春田に恋をする(もしくは、心の奥底に本当はずっとあった春田への想いに気づく)という展開を祈るしかない。でないとこのままでは「全員片想い」で終わってしまう。そんな不完全燃焼のエンディングなんて誰も望んでない。私は春田&成瀬の幸せエンドを諦めきれない。想いが通じあって笑い合うふたりを見たい。