『マリッジ・ストーリー』というNetflix映画がある。今年1番好きな映画だ。内容は、協議離婚をしようとした夫婦が、裁判になだれ込んでいくという切ないラブストーリー。本作を観ていたら、ふと『最高の離婚』を観たくなった。
『最高の離婚』は2013年の作品で、もう7年近く前になのに未だに鮮烈に記憶に残っている。『マリッジ・ストーリー』が離婚する最中の話なら、こちらは離婚した後の話だ。価値観の不一致から離婚届けを出した夫婦が、何やかやで互いへの愛情を再認識していく。いわば、離婚から始まるラブストーリーだ。そこに、主人公の元カノと、その相手が絡んでくる。こちらは、婚姻届けを出すということに...
『マリッジ・ストーリー』というNetflix映画がある。今年1番好きな映画だ。内容は、協議離婚をしようとした夫婦が、裁判になだれ込んでいくという切ないラブストーリー。本作を観ていたら、ふと『最高の離婚』を観たくなった。
『最高の離婚』は2013年の作品で、もう7年近く前になのに未だに鮮烈に記憶に残っている。『マリッジ・ストーリー』が離婚する最中の話なら、こちらは離婚した後の話だ。価値観の不一致から離婚届けを出した夫婦が、何やかやで互いへの愛情を再認識していく。いわば、離婚から始まるラブストーリーだ。そこに、主人公の元カノと、その相手が絡んでくる。こちらは、婚姻届けを出すということに抵抗を抱える2人。結婚を終えたカップルと、結婚に向かえないカップルの苦悩が、ユーモラスながら生々しく描かれる。
永山瑛太さん、尾野真千子さん、真木よう子さん、綾野剛さん。この4人の出演陣が絶妙で、男のどうしようもなさや女の悲しみなどを、佇まいや表情で見せる。大ブレイクする前の窪田正孝くんも出演していて、今観るとフレッシュな演技がまぶしい。
そして、やはりセリフが秀逸。脚本が坂元裕二さんだけあって、男女のリアルな感情が見事に言葉で表現されている。「男はこう思う」「女は感じる」のすれ違いは何度観ても刺さるし、何度観ても納得できる。自分の恋愛経験につい重ねて観てしまうだろうし、逆に後から「これ、『最高の離婚』でやってたな」と思うこともあるだろう。驚くほど、私たちの生活に「近い」物語だ。
『最高の離婚』の基本は、会話劇だ。大がかりなことは特段起こらず、描かれるのは男女4人の物語。ただ、興味深いのは「過去」ではなく「現在」が描かれるということ。この作品の中には、回想シーンというものがほぼない。昔のことは全て、当事者のセリフで語られる。故に、非常にリアルだ。私たちは、現実世界と同じくひたすら残酷にまっすぐにしか進まない時間の中で、別れた後の2人がどんな道をたどるかを見つめていく。
さらに、いちばん大事な夫婦の“出会い”が終盤に明かされるという演出も面白い。視聴者は「恋人」だった時期の2人を知らず、必要以上にキャラクターに踏み込むことを許されないが、2人の恋人時代が明かされることで、これまでの道のりが腑に落ちるようになる。全部観てから最初に戻ると、夫婦がなぜ離婚を選んだのか等、全く違って見えるはずだ。
「男と女という生き物は、こんなに違う」と教えてくれるドラマでもあるし、恋愛の指南書でもある。この作品の賞味期限は、まだまだ来そうにない。