危篤に陥った寿三郎に家族がそれぞれの言葉をかけ、その内容によって心拍数が復活するというユーモアもありつつ……。なぜ人は、死の間際を迎えたときにならないと本音を言えないのだろう。普段から伝えていたらいいのに、分かっていても言えない。それが家族だったりする。寿一も、自分は普段から言いたいこと言っているから、と、特に周りと同じような調子で寿三郎に声はかけない。本当は山程言いたいことがあるはずなのに。ただ、心に引っかかっていたプロレスのことをカミングアウトするに至り、そしてその掛け声で寿三郎を今一度この世に呼び戻す。息子と家族たちの声にはその奇跡を呼び起こす力があった。

しかしラストに「奇跡は２度起こらなかった」という台詞が重くのしかかる。どういう意味だろう……という余韻を残して最終回を迎えることになるのが正直つらい。親と子の別れの話に、本当になってしまうのかもしれない。今まで勝手に、残された寿一がどのように生きるのか？という話しになると思っていたのだけれど、今回の9話を見ていると、寿一がこの世を去ってしまう可能性も感じられた。プロレスラーというのは、命を落としてもおかしくない職業である。そして、「離見の見」や「隅田川」というモチーフ。照れともとれる、寿三郎が「ガキ使」見るから試合は見ないという台詞。生きて〇〇に会えないのは、果たして誰なのだろうか？

できればミスリードであって欲しい。本作を最後に表舞台から去ってしまう長瀬智也さんの姿を重ねてしまうこともあり、そのラストでは本当に何かが「終わってしまう」感じがして……。最期に、プロレスラーとして死んでいく寿一、というビターな終わりをクドカンが描くとも思えないけけれど。長州力さんが「引退しても何度でも戻ってくればいい」と言っていたシーンもあるので、どうなるのかは本当に分からない。私の妄想が過ぎるのだ、きっと。