家族旅行を経て家族の結束は高まりつつも、やはり一筋縄でいかないのが人生。それぞれの事情から、親の介護があるにも関わらず実家に寄り付かなくなってしまう面々。その、家から離れてしまう理由にも様々あり、舞の「女性が家の中で数としてカウントされていない」という問題や、寿限無の「自分ではない」と感じてしまう気持ちなどが浮き彫りになる。ようすけは寿一とさくらのことで怒ってしまった訳だけれど、描かれていないだけで彼もまた能の家に生まれてしまった自分が何もかも「下手」なことにコンプレックスを抱いているのは容易に想像できる。なぜそんなことを感じてしまうんだろう?なぜそんなことを抱えてしまわなければいけなかったんだろう?その問いに向き合うとき、やはり家族や家柄というものが、素晴らしく美しいだけのものではない、と分かるわけで。耐え忍ぶことが美徳とされてきた時代はもう、本当に、そろそろ終わって良いのではないだろうか。誰かの我慢の上で成り立っていた「あたりまえ」なんてものは、早い所ぶっ壊れてしまったほうがいい。日本の伝統芸能である能が今回のドラマで取り上げられていると知ったとき、私は「ぶっ壊してくれないかなあ」と期待していた。家族を否定したいわけではなくて、ね。こうして、登場する人物たちの抱える思いが今を生きる私たちの世界とキチンとリンクしているところが、このドラマを好きだと思える理由の1つなんだろうな。
生まれてからずっと自分より大きな存在だと感じてきた親が、とても小さく儚く見えてしまう瞬間。説明してもし足りない感情が溢れて、最後の寿一と同じような顔になってしまう。これから家にいる時間が少しずつ減っていき、ホームで過ごす時間が長くなってしまうのだろうか。能の「隅田川」が描いたように、生きて我が子と再会できない、という悲しい結末だけは迎えて欲しくないと切に願っている。