女優・森七菜には言語化しがたい魅力がある。そういえば似たようなことを黒島結菜のときにも書いた。森七菜にもあるんだ。私が森七菜を認識したのは『3年A組』の時だったが、その頃から“注目の新人女優”として取り上げられていた。その当時は強く何かを思うことはなかったけれど、それから様々な作品で見かけるたびに、森七菜の姿を目で追う私がいた。「どんなところが良いの?」と聞かれると上手く言葉に出来る自信がないので、とりあえず“オーラがある”と言っている。きっと特別な子なのだと思う。
この秋から始まった『この恋、あたためますか?』は、そんな森七菜の魅力が存分に出ている。主人公の樹木(この名前もめちゃくちゃ森七菜っぽい)は、地下アイドルを卒業し、今はコンビニ・ココエブリィでアルバイトをしている。唯一の趣味はインスタでコンビニスイーツのレビューを書くこと。ひょんなことからココエブリィの社長・浅羽と出会い、新しいコンビニスイーツの開発を任されることになる。
無気力に生きる樹木と俺様社長な浅羽の組み合わせは、一昔前に流行った韓国ドラマみたい。森七菜演じる樹木の粗暴さも、どことなく昔の広末涼子を思い出すのだ。中村倫也演じる浅羽社長のツンデレ感も少女漫画というか、レディコミでありそう。もしかしたら『恋あた』は、令和初のトレンディードラマを作ろうとしているのかもしれない。
なにかとアラサー女性に呪いをかけたがっていたTBSが、ここにきて「賞味期限切れの烙印を押された20代女子」をヒロインに据えたのは興味深い。中村倫也の艶がある声はどんな台詞でも現実味を帯びるし、森七菜は始めから作品の世界に存在していたような浸透力がある。元地下アイドルという肩書きも、無気力なコンビニ店員という設定も抜群に似合ってしまうのだ。今作で初めて森七菜を見た人も、樹木が泣いたラストシーンで光るものを見つけたはずだ。
「今年はいろんなことがありました。甘いものは人を幸せにします。」
『この恋』のキャッチコピーにはそう書かれていた。ぶっちゃけ好みが分かれそうな作品ではあるけれど、TBSが珍しくトレンディードラマを作ろうとしているならば、私は応援したい。甘いものとラブコメは、人を幸せにするのだから。