




アンナチュラルと並ぶ、もしくは超えてくる可能性すらも感じる大傑作ドラマ。
アンナチュラル以来の野木亜紀子さん脚本、塚原あゆ子さん演出、新井順子さんプロデュースのタッグ。
このタッグの作るドラマは、1話完結としての質の高さでも十分すぎるのに、その裏で積み上げられる物語でさらに想像を超えてくる。
本当に物凄い作品です。
こんなに早くにアンナチュラル並の傑作が生まれるとは思ってもいなかった。
ドキュメンタリーをエンターテインメント化したようなドラマ。
なかなか重たくて辛辣なテーマが並ぶのに、ちゃんとエンターテインメントとしておもしろいのがミソ。
スケール感も凄くて、フィクションなのに現実でも全然起こり得そうなことが、絶妙のラインで描かれている。
前半は転換点に誰とどう出会うか、人との関わり方、そして関わる人の取捨選択の大切さが、現実にもいそうである一個人に焦点が当てられ、様々な社会問題への問題提起とともに示唆される。
それが回を進むごとに色んなものが裏で積み上げられ、国全体を揺るがすような大きな事件へと繋がっていく。
その中で現実には僕らが見えていないモノが、ドラマを通して見られている。
それは何か。
それぞれの人間の表面に上がってきていない裏側の姿である。
それはその人間そのものであり、そこを見せながらそれぞれの事件が起こることで、いかに自分たちが普段目に見えている情報でしか物事を判断できていないかを浮き彫りにしていく。
本作では裏側がしっかり見えているから、自分たちは彼らが爆発を企てたテロリストではないことを把握しているが、もし現実に同じような起こったとしたらどうだろう。
本当に本作が描いているように、それぞれの人間の裏側を見ようともせずに、目に見えている情報だけであらゆることをジャッジして、検討ハズレな発信をしてしまうのではないだろうか。
事実かどうかがわからない情報を鵜呑みにして、さも事実であるかのように物語が作り込まれ、それが平然と拡散されていく。
そんなよくないフェイクが世論=真実になってしまうと本当に恐ろしい。
でもそんなことになり得る可能性が全然あるのが現代社会である。
これは日本全体の民度に対して警鐘を鳴らしているように感じる。
久住という一人の男に振り回される警察と国民。
国民がトレンドに流されることで歪められる真実。
SNSをあらゆるものを決する取捨選択の参考にし過ぎることで見誤る選択。
そしてあらゆる正義の混在と暴走が引き起こす悲劇。
あらゆる今の延長線上が包括され、描かれているようだ。
トレンドは乗っかることでバズる可能性を秘めているから、ひと呼吸置いて考えて発信しないといけない事象でも、それに関するツイートが溢れてどんどん広がっていってしまう。それがフェイクだとしても。
それって事象によっては本当に怖いこと。利用する人間がいるなら尚更そうだなと。
さらに、あらゆる人たちの選択や行動が描かれることで、一人一人の選択や行動のあり方にも切り込んでくる。
無意識ならもっと意識しなければならない。
無思考ならもっと思考しなければならない。
そんなメッセージを強く感じる。
説教臭い教育ドラマになりそうなのに、それを全然思わせないのがこのドラマの凄いところで、それはやっぱりベースにあるエンタメ性がちゃんと機能しているから。
そこが物語の展開やスピード感であったり、キャラクターの作り込みに興味が唆られたりと、そういう意味では、全てが非常にうまく作用していると思う。
伊吹と志摩のキャラクターは、少し大袈裟すぎるのではと、ここまで作り込まなくてもよいのではと、前半は思ったりしたこともあったが、後半になればなるほど活きてきて凄くよい!
そして、最後はまだまだどう転ぶかわからない。
今まで積み上げてきたものがどのように昇華されていくのか。
楽しみで仕方ない反面、終わってしまうのがとても寂しい。
相変わらず米津玄師さんの主題歌ともマッチしていて、このレベルの作品が地上波で、無料で観られていることに驚きであり感謝。
P.S.
野木亜紀子さん脚本のドラマを観てると、自分の知っている世界の狭さや知っているようで知らないことの多さを痛感させられる。
自分の営む生活の中では、全然現実とは思えない現実がこの国には広がってるんだなと…
自分は安全地帯の中で生活してるような感覚でも、誰かにとってはそれが幻想なんだなと…。
1話完結で語られることは、特に視野を広げてくれる素晴らしい題材ばかりだった。