「テンション上がってきたぁ~!」
綾野剛演じる伊吹の叫びは、放送を待ちわびていた視聴者の声を代弁しているようだった。『MIU404』は春から始まる予定だったドラマの中でも、とびきり期待度が高かったように思う。脚本は『アンナチュラル』などのヒットメーカー・野木亜希子が担当。同じく『アンナチュラル』のスタッフが集結し、これまた『アンナチュラル』と同じ米津玄師が主題歌を担当した。正直に書くと、次から次へと展開されていく凄まじいテンポに振り落とされまいと必死の初回だった。ここで一度整理したい。
舞台となるのは、“MIU”と呼ばれる警察庁刑事部・第4機動捜査隊だ。これは架空の組織であり、機動捜査隊(機捜)の働き方改革のために設けられた臨時の部隊である。彼らのタイムリミットは24時間。出来うる限りの初動捜査を行い、その後は別部隊が引き継ぐ。そこで元捜査一課の志摩(星野源)がバディを組むことになったのが、“足が速い”破天荒な男・伊吹だ。
冒頭からあおり運転に巻き込まれた塩顔バディの初捜査は、とある突き落とし事件だった。被害者は二人を煽ってきたタチの悪い運転手。実は彼もまた、他のドライバーから悪質なあおり運転に合っていたことが分かった。しかも被害者は彼一人だけではなく、煽り返した他の車も破損行為を受けている。
どうして煽り運転をするんですか?の問いかけに、「負けたくないからに決まってんじゃん」と返す伊吹。志摩は悟ったかのように「だけど、マウントの取り合いは悲劇しか生まない」と呟いた。悲劇は悲劇しか生まず、悲劇の連鎖こそ虚しく不毛なことはない。初回放送でのメッセージを私はこのように受け取った。
歴代の野木作品と比べると、すこし助走な感じもした。いや、初回ですからねと自分に言い聞かせる。ちなみに突き落とし事件と同時進行していたお婆ちゃんの捜索は、MIUの在り方を説くために置かれたエピソードのように思う。満足げに語る伊吹の「機捜って良いな。誰かが最悪な事態になる前に止められるんだろ?」はMIUの存在意義そのものだった。
タイトルにある“404”はMIUのコールサインであり、404エラーも意味している。私たちの世界には“存在しない”彼らが、どのような物語を展開していくのだろうか。『MIU404』に振り落とされないよう、週末の夜は画面にかじりつく予定だ。