“あゆブーム”が起こった頃、私は小学生だった。当時のあゆの人気は今で言うと誰くらい?と聞かれても、簡単には出てこない。特にあゆの熱心なファンではなかったが、『A BEST』(金髪ショートカットのあゆが泣いているジャケ写)は持っていたし、『evolution』のあゆを真似してファーの尻尾をつけていた時期もある。それから十数年の時が経ち、あの“あゆ”がついに暴露本を出した。双方の了承を取っているので正確に言うと“暴露”ではないかもしれないが、トップまで登りつめた当時の恋愛を赤裸々に書いているのだから、外野からすると暴露本と同じ立ち位置である。そのニュースを見て特に何とも思わなかったけれど、名曲『M』の“M”が松浦の“M”だと知った時は……複雑だった。
その『M 愛すべき人がいて』が、この度ドラマ化されることになった。時間はテレ朝深夜枠、脚本は鈴木おさむで、共演は三浦翔平。この3点セットを見ると嫌でも『奪い愛、冬』が頭に浮かぶ。テレビ朝日のトンチキ不倫ドラマだ。ドラマというより、豪華役者が揃った60分のコント番組だったような気もする。あゆ、それでええんか……?そっちの方向で本当にええんか……?
初回では、田舎から上京してきたアユが、新進気鋭のレコード会社専務・マサと出会う。それまでアユは別事務所で役者の仕事をしていたが、マサに歌の才能を見出される。劇中では浜崎あゆみ本人の歌声が使われ、avexの他アーティストをオマージュしたグループも登場した。
かなりのトンチキを覚悟していた身からすると、すこし肩透かしな初回だった。巷では“みかんの皮”と言われている眼帯姿の田中みな実など、明らかに様子がおかしい人物はいるものの、期待以上のインパクトはなかった。笑ったのは悪意を感じる小室哲哉らしき人くらい。むしろ鈴木おさむは、わりと真面目に実写化するつもりなのではないかとさえ思った。しかし、実在の人物をモデルにしたドラマと言えど、NHKの朝ドラみたいには絶対ならないのだから、もっと想像の斜め上をいってほしい。どんな作品でもどんな役でも全力で挑む三浦翔平のことは相変わらず好きだ。せめて放送期間中くらいは、“M”は“三浦翔平のM”だと思うことにする。