「それでも日常はやってくる」
こんな当たり前のことを一番に教えてくれるのは、NHKの朝ドラだと思う。最終回の感想を書こうと思ったら、だいたい次の作品が始まっている。『まんぷく』も『なつぞら』も書けなかった。つい2日前、大好きな『スカーレット』が終わった。やっぱり間に合わず、振り向いたら『エール』がそこにいた。
時短勤務になったので早起きする必要はないけれど、初回くらいはリアルタイムで見たかった。目が覚めたのは放送時間ギリギリで、朝ドラ大好き・高瀬アナが名残惜しそうに『スカーレット』への思いを語っている。……わかるよ、私もまだ気持ちの整理がついてない。時刻がちょうど8:00になると、「紀元一万年前」のテロップと共に、原始人に扮した窪田正孝が現れた。紀元一万年前……?私はまだ寝ぼけているのか?すると、原始人の二階堂ふみも現れた。あれ、今回の朝ドラって『実写版・日本の歴史』だったっけ。頭を抱えた私を置いて、原始人の窪田正孝はウホウホと喜んでいる。
時は移って、1964年の東京オリンピック。開会式が始まろうとしている直前、妻・音は夫の裕一を血眼になりながら探していた。「あと何分?」「7分です」この中途半端な残り時間は、朝ドラが終わる8:15を指している。そうだ、もう少し爪痕を残さないと『エール』の初回感想は“原始人な窪田正孝”と“フラッシュモブな窪田正孝”で埋まってしまうぞ!開会式に出たくないと駄々をこねる裕一の姿は、会社に行きたくないと口を尖らせる月曜の私と似ていた。
まるで序曲のような第1話だった。物語が本格的に始まるのは明日からなのかもしれないぁ、と思った矢先に悲しい出来事があった。想像していた以上にショックを受けている自分に驚く。それでも私の日常はつづくし、それでもやってくるのがNHKの朝ドラだ。いつも通り、明日には第2話の放送がある。
“不要不急”という言葉が間違いなく流行語大賞に選ばれるだろうこのご時世、エンタメや娯楽の重要性を痛いほど感じるようになった。「ずっと音楽は人のそばにある」「時に音楽は折れかけた心に力を与えてくれる」「音楽はすばらしい」冒頭に流れた数々のメッセージは、まるで心の内を代弁してくれているみたいだった。
画面は明るい。看板を担う窪田正孝と二階堂ふみの実力は、言わずもがな十二分にある。不要不急を連呼される今、音楽と娯楽の意義を感じる作品になってほしいと思う。