2019年、個人的に1番ハマった国内ドラマだ。一言で言うと、2019年の「働き方」を問うお仕事ドラマ最前線。
IT企業で働く東山結衣は、絶対に定時で帰ることをモットーとしているOL。周囲から煙たがられることもあるが、自分の主義を曲げない。それは、過去に過労で倒れたトラウマがあったから。彼女は、「ワーカホリックの元カレ」「パワハラ上司」「イキッた新入社員」「産休・育休明けの先輩」といった周囲の人々が抱える問題に取り組んでいく。
そもそも「定時で帰る」当たり前のことが「異端」としてドラマにまでなってしまうこと自体が日本の勤労状況の恐ろしさを物語っているともいえるが、本作は地上波の...
2019年、個人的に1番ハマった国内ドラマだ。一言で言うと、2019年の「働き方」を問うお仕事ドラマ最前線。
IT企業で働く東山結衣は、絶対に定時で帰ることをモットーとしているOL。周囲から煙たがられることもあるが、自分の主義を曲げない。それは、過去に過労で倒れたトラウマがあったから。彼女は、「ワーカホリックの元カレ」「パワハラ上司」「イキッた新入社員」「産休・育休明けの先輩」といった周囲の人々が抱える問題に取り組んでいく。
そもそも「定時で帰る」当たり前のことが「異端」としてドラマにまでなってしまうこと自体が日本の勤労状況の恐ろしさを物語っているともいえるが、本作は地上波のドラマのトーンを守りつつ、多様化した現代にふさわしい働き方とはなんだろう、と問いかける。
個人的に非常に素晴らしいと感じたのは、視線の平等さだ。勧善懲悪ものにしてしまえば、主人公は是、それ以外は非になる。本作は様々な事情を抱えた周囲の人間たちの事情をしっかりと描くことで、どちらも懸命に働いているのだ、というメッセージをまず伝える。上司の世代には「部下はこう考えています。今はこういう時代です」をちゃんと届けるし、新入社員の世代には「会社という組織では、これは守らないといけないルール」だとしっかりと教える。世代を問わずに、寄り添う作りになっているのだ。
会社員だけでなく、フリーランスの女性が仕事を取るためにセクハラを我慢しないといけない、引きこもりの社会復帰の大変さ等、多様な働き方にフォーカスしているのも特徴だ。さらに、社内のコミュニケーションツールがSlackなど、実際の企業で使用されているアプリケーションを取り入れ、現実味も付加。とても丁寧に作られており、「説教臭い」要素が全くない。
本作に明快で強いメッセージがあるとしたら、「身体と心を大切に」くらいだろうか。結衣と元・婚約者の種田晃太郎が破局してしまったのは、激務が続いてしまったからだった。仕事というのは生活の手段であって、あくまで基盤は生活。仕事>生活になってしまったら、何の意味もないのだと教えてくれる。
ただ、本作は「仕事が生きがい」という人のことも無視しない。ワーカホリックを悪として描いてしまえば、それはそれで差別になってしまう。ただ、会社は複数人で動くものだから、限度が必要だ、と優しく諭すような語り口が印象的だ。
誰もが無理せず、共存できる「労働」とは。
改めて、考えさせられた。