大人になっても、忘れられないドラマがある。それは個々人によって違うだろう。それぞれの思い出と結びついていて、場合によっては人格形成の礎になっていたりもする。子どもながらにグッとくる何かがあったということで、意外と今見返しても、「いい!」となることが多い。
自分にとって『恋ノチカラ』は、そういう作品だ。2002年に放送された本作を観たとき、まだ中学生。『やまとなでしこ』の面々だ!とか、そういった予備知識は特になく、おそらく「『踊る大捜査線』の深津絵里さんが主演」ということくらいしかわかっていなかったと思う。そのころの自分は家族でドラマを見ていたから、そもそも選択肢などなかったのかもしれない。
だがこのドラマに、大いにハマった。恋愛もよくわからないのに、なぜ今日に至るまで大切な作品なのか――そこについて考えてみると、やはり「作り手が主人公の作品」というのがあるかと思う。本作は、独立して会社を立ち上げたクリエイターたちの物語だ。ベースは恋愛ドラマだけど、作り手の意地とか、ものづくりへの情熱がちゃんと描かれている。堤真一さん演じるクリエイターが、不器用ながらも良いものを作ろうとまい進する姿に、子どもながらにいいなぁと思ったのかもしれない。
というのも、父母共にクリエイターという環境に育って、自分もそっちの方向に行きたいなとなんとなく思っていたから。営業に行ったり接待したりと、今観ると「大変そうだな……」という気持ちにはなれど、それでも自分の意志を貫いて、仲間たちとクリエイティブを志向する姿は、一種の「夢をかなえた姿」として映った。そして今、ライターになってからは、ますますこのドラマが大切な存在になった。缶コーヒーやエンピツネズミなど、自分がデザインした商品が世に出るという喜びと責任が、よりわかるようになってきたからだ。
そしてまた今観ると、かつてはクリエイティブにいた(仕事上の失敗で現在は庶務課に移動)30歳のOLが、勘違いでベンチャー企業に移籍し、そこで粉骨砕身頑張る(恋もする)という物語に、違った共感を覚える。ある程度社会人経験を積んだ今の感覚で観ても、十二分に面白い作品なのだ。恐らく、当時のターゲットというのは主人公と同世代だっただろうから、成長して同じ目線で楽しめるというのも、非常にお得感がある。
転職の大変さや将来の不安やキャリアプランにライフプラン……その辺りが感覚としてわかってくると、恋愛の比重がまた変わってくる。主人公が「恋にまっしぐら」になれないところに、当時は「優しい性格なんだな」と思っていたものが、それだけではないと気づかされたり。そういった意味でも、これからも末永く付き合っていくのだろうなと思う。
1つ好きなシーンがある。ヒロインにとっての理想のデートは、ファミレスで深夜まで語り明かすこと。あの良さが、今になってめちゃくちゃわかるようになった。本当に好きな人とは、そういう時間を過ごしたくなるものだ(別のシーンだけど、深津絵里さんがイカスミパスタを食べて歯が真っ黒になるシーンもすごく覚えている)。自分の中でも、恋愛における大切な指標になった。
恋愛観も、仕事観も、教えてくれた大切な作品だ。