アンサング(unsung)とは、“賞讃されない”という意味らしい。飽和状態にある最近の医療ドラマは、外科医や救命医やナース“じゃない人”たちにスポットを当てることが多くなった。『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の主人公は病院薬剤師。初めて見る病院薬剤師たちの日常は想像以上にハードで、(当たり前だけど)一つのミスも許されないシビアな世界だった。製薬関連のCMをこんなに見たのも初めてだった気がする。
可もなく不可もなくな初回だった。たしかに病院薬剤師が主役のドラマは初めての試みかもしれない。だけどドラマから汲み取れることは“主人公の仕事の大切さ”と“命の大切さ”で、主人公が医者でもナースでも病院薬剤師でも、結局は皆んな同じ着地点になってしまっている気がする。身内であるはずの医者から厳しく追求された後、患者に「命を救ってくれてありがとう」と言われてからの少女二人の切なくも新たな門出を祝うwith桜の感動コンボにもお腹いっぱいになってしまった。ただ、退院したら終わり“がち”なゲスト患者のアフターストーリーを描いたエンディングはとても良かった。前作「アライブ がん専門医のカルテ」の矜持と似たようなものを感じた。
エンディングはとても良かった。とても良かった……のだけど、石原さとみが大好きな私は「なんだかなぁ~」という後味を含んだまま、ドラマの後に原作漫画を読んだ。原作漫画……おもしろいじゃん。“病院薬剤師”という専門的な仕事を扱っていながらも、全体的に読みやすい。ドラマ版はさとみの年齢に合わせて主人公の設定も変えているのだが、それに伴ってドラマ自体もトーンダウンしているように感じた。さとみを始め、テンポも口跡も良い役者が揃っているので尚更もったいない。
医療従事者について全く知識がない私から見るとこのような感想になるが、実際に病院薬剤師として働いている人や彼らと共に働いたことがある人のツイートを見ると「このドラマを機に病院薬剤師のことを知ってほしい」という内容が多かった。「なんだ、いつもの医療ドラマか」と流し見をしてしまうのは、たしかに勿体ないのかもしれない。病院薬剤師がアンサングなこと以外にも、なにか強いメッセージを残してくれるドラマであることを願う。