『ハケンの品格』が13年ぶりに帰ってきた。「驕れる正社員は久しからず……」から始まるお馴染みのナレーションも、スーパーハケン・大前春子も、そして今作の方向性も13年前と全く変わらず、驚愕としている。2020年春から施行された“同一労働同一賃金”も“消費税10%”も、“桜を見る会”も取り上げられた。しかしなぜか『ハケンの品格』の世界だけ、時が止まったような印象を受ける。
第一話では正社員からのセクハラに苦しむ派遣社員・亜紀(吉谷彩子)の姿を描き、今回の第二話では新米派遣社員の小夏(山本舞香)が企画書を練り始める。2007年版の新米派遣・森美雪(加藤あい)も同じようなことをしていたが、ドラマ内でも言及している通り、派遣社員は企画を出さない。だけどそれを分かっててチャレンジするのが『ハケンの品格』!今回も派遣社員が作った企画書が波乱を呼び、スーパーハケンの大前春子がS&Fのピンチを救った。
『ハケンの品格』は勧善懲悪の世界だ。スーパーハケンの大前春子が正義を貫くため、正社員たちは必ず「悪者」になる必要がある。2007年版のオーバーな描写は時代特有のものだと思っていたが、正社員の露骨な描き方は2020年版も健在だった。セクハラをリークした派遣社員を慰謝料目的かと責め立てる人事部、派遣社員だと知ると明らかに目の色が変わる社長。塚地武雅演じる部長が「俺に言わせりゃ、正式な場で会社のことを“我が社”“弊社”と呼んでいいのは社員だけ」と言い始めたシーンでは、時代錯誤を通り越えてクラクラした。これは一体どこの国の話なんだ。
令和になった今でも待遇に苦しむ派遣社員は存在するだろう。しかし、派遣社員の敵は『ハケンの品格』に出てくるような〝悪者〟ラベルが貼られている露骨な正社員だけなのだろうか。むしろ切り込むべき問題はもっと深いところにあって、表面上には見えずとも散見している偏見や苦しさにこそ、大前春子はメスを入れるべきだと思った。