「海や〜」と第1話の冒頭に戻った149話。
通常のドラマなら最終回にしても成立するところに、もう1話残した。
残した1話で描かれるのは文字通り、武志の「余命」だと考えます。
さて、水橋さんはスカーレットの脚本にいくつかルールを用意していて、その第一は
別れの際には「お米料理」を食べないこと。
おはぎを食べなかった圭介、焼き飯を食べなかった草間さん、松茸ご飯を食べられなかった常治。
ではマツはどうだったのか?
実はマツの亡くなる110話の前日、
例の伏線が詰まりまくった109話に、武志が喜美子のおにぎり弁当を断るシーンがありました。
「夕日がきれいなとこまでたどりつけへんかった」「寝るにはちょっと早いけどな」
(と武志が病床に伏せる暗示をした)そのあと、おにぎり弁当を持たせようとする喜美子に
武志が「そんなん食べてる人いやらへん」と断って出かけようとします。
けれどすぐに戻ってきて
「オレの代わりに、今日からおばあちゃんの布団敷いたってな」と告げて遊びに行きます。
そうして武志が不在となったこの夜、
マツ・喜美子・直子・百合子が鮫島のおごりで「うな重」を食べました。
そして翌日の110話でマツは亡くなり、入れ替わるように武志が卒業して帰ってきます。
これが何を意味するのか。「マツが武志の身代わりになった」と考えられないでしょうか。
別れの際は「お米料理」を食べないことがスカーレットのルールなのに、
「おにぎり弁当」を食べなかった武志ではなく、「うな重」を食べたマツが亡くなった。
このエピが先日の145話で、武志が「うな重」を食べたことで回収されたと見ます。
つまり「うな重」を食べて亡くなったマツの代わりに、武志が生きるのだと。
スカーレット脚本のもうひとつのルールは
喜美子と直子が幼少期からずっと鏡の関係で描かれてきたこと。
借金取りに卵をとられた喜美子vs奪い返した直子
大阪から戻された喜美子vs東京に出ていった直子
お父ちゃんを看取った喜美子vs帰ってこない直子
八郎と離れる喜美子vs鮫島と近づく直子
八郎と近づく喜美子vs鮫島と離れる直子
これは、喜美子と直子が空襲で手を離したことの象徴だと推察できますが、
148話で喜美子と直子の縁側での会話によって回収されました。
これで姉妹はようやく
八郎と近づく喜美子=鮫島と近づく直子
と、同じ道を歩むことになったわけです。
この歴史的タイミングで、鮫島は関係者の中で唯一ドナー検査を受けておらず、
「ドナーなりましょ」と言う男だと示されます。
これは、喜美子側にもまだ「ドナー検査を受けていない、ドナーになる人物がいる」ことを暗示しているのではないか。
そして直子が鮫島に会いに出かけたのは東京の蒲田だと明示されます。
なぜ東京と言えば済むのに、わざわざ蒲田と具体名まで出すのか。
大阪人の私は、蒲田をググりました。そこには
「蒲田は江戸時代から『梅』の名所として知られる」と書かれてありました。
ここで思い出してください、長寿の縁起物である松竹梅の揃い踏みを。
松:武志の身代わりで亡くなったマツ/乳がん支援する荒木さだはマツの遠縁
竹:武志のニックネームはタケタケ/今日は桃と桜がタケ兄ちゃん呼び
梅:ウメは圭介のいる和歌山の名産/和歌山で穴窯を継ぐ弟子の手土産がウメ/直子と鮫島のいる蒲田もウメの名所
これだけの手札が揃ったら、
やはり武志は梅の名産地・和歌山から送られたマツの血縁の骨髄で助かる
と見て間違いないでしょう。間違いないと信じたい。間違いないと言ってくれ。