カギを握るのはやはり穴窯でしょう。
穴窯は子宮のメタファーと想像できること。
喜美子が穴窯をやめて武志に全エネルギーを向けること。
「もっともっと燃やすんや」と「もっともっと生かしたる」の反復からも、
穴窯の炎が武志の生命の炎を暗喩していると考えられます。
なので、もし武志が救われるのであれば…
穴窯の成功を助けた関係者の中に骨髄の提供者がいると見ました。
よって残念ながら八郎は合致しないと思われます。
穴窯成功を手助けしたのは
直子、鮫島、百合子、信作、マツの5人。
血縁でないのに合致するとは思えず、鮫島と信作は除外できるでしょう。
ここで思い出したいのが、直子がマツを激怒させたエピソードと
穴窯成功との類似性です。
合唱の練習でマツの声が出なくなり、
口が塞がれたせいで怒りの炎が封じ込まれて噴き出し、
直子の腹から(擬似)子どもが産み出される
↓
合唱でお祝いされた穴窯が失敗続きになり、
出口を塞ぐことで薪の炎が封じ込まれて噴き出し、
喜美子の作品が産み出される
つまりマツ+直子=穴窯という構図が描かれていたということ。
冒頭に書いた穴窯の炎=武志の生命の炎と考え合わせると、
骨髄提供者は直子だと推察するのが妥当でしょう。
しかし!もう一つ気になるエピソードがあります。
美術大学に合格し京都へ旅立つ前日、
「夕日がきれいなとこまでたどりつけへんかった」武志。
大津へ遊びに出かける前、「寝るにはちょっと早いけどな」とマツの布団を敷きます。
放送当時すごく胸に引っかかったこれらのセリフは、
武志が「陶芸家への道半ば」で「若くして病床に伏せること」
を暗示していたと考えられます。
さらにいったん家を出て行った武志が戻ってきてダメ押しのように
喜美子にこう頼みます。
「俺の代わりに、今日からおばあちゃんの布団敷いたってな」
そして今週頭から、喜美子が武志の布団を敷いたり、病床で話すシーンが繰り返されています。
そう、武志とおばあちゃんは一心同体。
骨髄を提供してやれるとしたら、優しい優しい孫への
「マツおばあちゃんからの恩返し」しかないと私はにらみました。
もちろん故人であるマツが骨髄移植をすることは「直接には」不可能です。
なぜ本作がこれまで一度たりとも、マツの実家を描かなかったのか?
最も遠い血縁として
この時のために残されてきたのだと私は読みましたが、さて。