前回の口コミで高畑淳子さんの演技の素晴らしさについて触れましたが、第9話ではさらにその上をいく圧巻の演技。
もう「素晴らしい」よりも格上の表現が見つからずに、なんと賞賛の気持ちを表していいのかわからないくらい感動させられました。
そして、1時間ずっとティッシュを握り締めながら見守りました。
第1話で高畑さんが演じる民代さんが登場した時から、もしかしたらこういう局面を迎えるのかもしれないと予想していたし覚悟はしてたんですけどねぇ(泣)
前回、手術後の抗がん剤治療を拒否して「残りの人生、自分のやりたいことをやりたい」と笑顔で病院を後にした民代さん。
行きたかった海外旅行へ行き、ローマからの楽しそうな写真が送られてきてみんなが安堵していたのも束の間、悲しい「ただいま」「おかえりなさい」という会話が交わされることに。
すっかり弱りきった民代さんは、誰の目にも残された時間があとわずかだとわかります。
それでも、笑顔を絶やさない民代さんを見ているだけで、ずっと涙目。
でも、決して辛く悲しいだけの涙ではなかったです。
ここまで民代さんを見てきた一視聴者としては、その笑顔の尊さに感激した涙でもありました。
高畑さんの笑顔は美しかった!
死と直面しながらも自分の人生を生き切っている民代さんそのもので、心の底から光り輝いていました。
今回のもう1つのお話しは、妊娠中にガンを再発した女性のお話し。
山田真歩さんが演じた女性は、凍結した最後の卵子でようやく念願の妊娠をした矢先に再発が見つかり中絶を勧められることに。
しかし、彼女は自分の命よりも子供を優先したいと言います。
それが叶わないなら、年下の夫とは離婚するとも。
彼は、まだ若い。
再婚すれば、子供は作れる。
そんな葛藤もまた、丁寧に描いてくれました。
山田さんはどちらかと言えば一風変わった役柄でドラマに起用されることも多いですが、元々とてもお芝居が上手い方ですから観ている側も心を動かされます。
そういうところも、このドラマの好きなところ。
イメージだけでキャスティングするのではなくちゃんと俳優さんのポテンシャルも含めての起用で、演出で誤魔化すことなくしっかりと演技を見せてくれる。
レギュラーの木下ほうかさんにしても、藤井隆さんにしても、きちんとした演技でドラマを支えてくれています。(決してお笑い要員とかではなく・・・ね。)
こういうところに、このドラマの誠実さを感じます。
ストーリー展開も決して1話完結で収まらず、きちんとした繋がりや積み重ねがあります。
一瞬でしたが、第2話でふせえりさんが演じていた患者さんがやっていたことが今も治療室で行われているのが映りました。
その場かぎりではなく、ちゃんと彼女の遺志が受け継がれていることが嬉しくなったシーン。
1つ1つのエピソードが大切にされていることがわかります。
もちろん、今回の民代さんと静さんのエピソードも、きちんと交わりがありました。
そして、後半の展開と演出もまた自分にとっては最高でした。(もちろん、涙腺崩壊しました・・・)
民代さんがやりたかったことの1つである「パーティーをする」という希望を、心たちが病室で叶えてあげます。
さらに、彼女が行きたかったパリの朝日をVRで見せてあげました。(ローマで倒れてその後に行く予定だったパリに行けなかったので)。
これは、第1話で民代さんが言った言葉に通じています。
「毎晩、明日の朝を迎えるのを願って眠る。」
「真っ赤な太陽を見て思う。今日も、明日の朝を迎えられるように精一杯生きよう。」
パリの朝日を見て、民代さんが初めて涙を流しました。
その後は、描かれていません。
ただ、仕事中に民代さんのとびきりの笑顔の写真を見て、思わず涙を流す心を映し出しただけ。
明確に「死」を表現しなかったからこそ、逆にものすごい余韻を引き摺ることになりました。
そして、今もまだ色々と思いを巡らせてしまいます。
あそこで息を引き取る描写をしなかったことで、物語りとしては前へ進めます。
が、観ている人の心には残り続ける・・・。
くぅ~!憎たらしい演出だっ!(泣)
今期たくさんある医療ドラマと呼ばれるものの中で、このドラマは視聴率こそ低いかもしれません。
でも、「ウケる」「話題になる」だけがドラマの目的ではないはず。
少なくとも素晴らしい演技と、テーマに沿った真摯な作品作りは今期のドラマの中ではトップですね。
このドラマの登場人物の笑顔は、本当に素敵。
自分も、今朝の朝日に感謝しました。
そして、笑顔の大切さを胸に刻んで今日も頑張ります。
こういうドラマが、多くの人に観てもらえますように。
そして、高畑さん。あなたは最高の女優さんです。
余談ですが、自分はどうにも薫のことが気になってます。
がんサバイバーなのよね・・・。