あらすじを簡単にいうと、「過去にタイムスリップして父が冤罪か確かめる」物語だ。1989年、父親が連続毒殺事件の容疑者として逮捕されたことから、地獄のような苦しみを経験した家族。2020年、大人になった主人公は、妻の進言で父の事件と向き合うことを決め、犯罪現場となった村に出向く。すると、なぜか事件が起きる直前にタイムスリップしてしまう。「今なら事件を止められる」と感じた主人公は、父への疑いを抱きつつ、真相究明に奮闘するのだが……。
人気マンガを原作とする本作は、「過去にタイムスリップする」というファンタジー要素を含んだミステリー。「子どもが、当時の親に会う」という設定は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』しかり、今までも描かれた「沁みる」アプローチだ。それは何故かというと、そこに親から子に向けた愛を感じられるから。『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも、過去にタイムスリップしたアイアンマン/トニー・スタークが、距離を感じていた父親の隠れた愛情に気づくシーンがある。
『テセウスの船』では、「父親の逮捕のせいでぐちゃぐちゃになった家族の幸福な姿を見る」「母親の笑顔を観て切ない気持ちになる」「父親に本音をぶつける」というシーンが観られ、特に主人公と父親の関係性は今後どんどん強まっていくだろう。父親は警察官で、2人がタッグを組んで真犯人を探していく(だが、父親が犯人ではないのか、という疑念も抱えつつ)という設定は、「信じたい」という愛情が混じることによって、ドラマティックな展開を帯びる。第1話ではまだ片鱗だったが、今後どんどんエモーショナルな展開となることが予想でき、連続ドラマの形態としては実に上手い。つまり、「これからこの親子の関係が氷解していく=愛情が深まる」ことが、作品への期待になるのだ。そしてまた、「冤罪であってほしい。未来が変わってハッピーエンドになってほしい」と視聴者に思わせることによって続きを観たくさせる、という意味でも優れている。
親子がタッグを組んで事件を捜査するという物語は、『オーロラの彼方へ』でも観られるが、やはり「サスペンス」と「親子のドラマ」のセットは観る者の感情を揺さぶるものだ。そこに「父親への疑念」が混ざれば、より面白くなる。そこで非常に効いているのが、鈴木亮平さんの二面性のある演技。
家族の前では良き父親、村民の前では正義感あふれる巡査の顔を見せつつ、時折ぞっとするような表情も見せる。この手の作品では定石の演出だし、視聴者においては「ブラフであればいいな」と思うものだが、この惑わせぶりが抜群だ。鈴木亮平さんの演技を観るだけでも、価値がある作品といえよう。この先彼がどんな「変化」を見せるかが、楽しみで仕方がない。