放送前の私は、風間公親のことを「やべぇ奴」だと信じて疑わなかった。退校届を問答無用に突きつけるシーンばかりを延々とCMで見ていたのだから仕方がない。しかし蓋を開けて驚いた。風間公親という人物自体は、至極真っ当な倫理観の持ち主だったからだ。正しい警察官を社会に送り出す為の「ふるい」として、極めて正常に機能していたようにも思う。致命的な過ちを犯した生徒は追放するが、改善が見受けられた生徒を見限ることはない。常に何十手先を読んで行動する風間の姿は、私が勝手に抱く〝木村拓哉像”にも重なって見えた。
真の「やべぇ奴」は、生徒たちの方だった。脅迫、暴行、覚醒剤常習者との密会に拳銃(自作)所持。なぜこんな人材が警察学校に……?!しかし、間延びしやすい二時間ドラマを飽きずに視聴できたのは、新春大売り出しと言わんばかりに、問題児たちが事件を起こし続けてくれたおかげかもしれない。主役は風間公親で間違いないのだが、スポットが当たっていたのは明らかに生徒たちの方だった。
どの役者も皆んんんんな素晴らしかった。特に林遣都、大島優子、西畑大吾、井之脇海の完全に「入った」芝居にはゾクッとした。味方良介も良かった。もちろん役者自身の高い演技力があってこその芝居だが、あの異常に張り詰めた空気感はカリスマ・木村拓哉の所業だろう。もともと才能ある若手たちの力を、木村拓哉との対峙で、極限状態まで引き上げることに成功した。そういう意味で今回のキムタクは、〝起爆剤〟としての役割も果たしていたように思う。今作を見てなぜか『3年A組』を思い出したのも、『教場』における木村拓哉とあの時の菅田将暉の役割が同じものだったからだ。
風間の過去や義眼の謎は明らかにされず、残り5分で上白石萌歌などの追加キャストが投入された。続編を匂わせるような終わり方にも見えたが、風間公親が実は良い人だと判明してしまった以上、続編を作っても今回のような衝撃は受けられないように思う。個人的には「あの鬼教官、再び!」みたいなダサいキャッチコピーをつけることなく、今回で粋に幕を閉じてほしい。