『きのう何食べた?』が好きだ。どれくらい好きかというと、原作は全部読破してて、ドラマも欠かさず観て、作品に影響されすぎてラタトゥイユを作っちゃうくらい。だから、お正月SPが製作されると聞いたとき小躍りした。シロさんとケンジにまた会える!ってずっと楽しみでしょうがなかった。
そして……いやぁ、良かった。素晴らしい3エピソードだった。今回は、原作の「シロさんとご両親の話(傘編)」「小日向さんとジルベールの話(アサリ編)」「シロさんとケンジの話(オムライス編)」で構成されていて、それぞれは独立したエピソードだけど見事につなげていて、改めてドラマ版のスタッフの方々の手腕に驚かされた。
『何食べ』のスタッフの方々は、原作愛が本気で深いと思う。原作だと5巻くらい離れてるエピソードをつなげて1つの物語に仕上げたり、実写化するにあたっての再構築がものすごくわかってる方にしかできないレベルなのだ。演出も優しいし、部屋がメインのドラマなのにちょっとした小物にもセンスを感じる(ゾウの形の醤油さしは、ケンジが買ったのかなぁ……とか想像してニヤニヤさせられたりする)。
西島秀俊さんと内野聖陽さんの演技は本当に素晴らしいし、これまで彼らの映画・ドラマ・舞台を問わずかなり観てきたけど、1・2を争うはまり役だと思う。西島さんの柔らかな笑顔と、内野さんの愛らしさ。どう観てもシロさんとケンジだ……。山本耕史さんと磯村勇斗さんも素晴らしい。この2人がTVシリーズでしっかりキャラ人気を確立したからこそ、今回のエピソード主役抜擢に至ったのだと思うとしみじみする。
そして、シリーズを通して描かれてきた「同性愛者ゆえの切なさ」を今回もしっかりと描いている。シロさんの家にお金がないのは、息子が同性愛者という現実を受け入れられなかった母親がマルチ商法にハマってしまって、お金を使いこんでしまったから。その責任を背負って、仕送りをしようとするシロさんの切なさ。年をとっても子どもに面倒を見てもらうことができないから、毎日倹約しているという哀しみ。その状況を全部知っていても、大好きなシロさんのために高級傘をプレゼントするケンジの愛。そして、「好きな人のためならお金の価値は何倍にもなる」というセリフが伏線となって、独立したエピソードを繋いでいる。実に見事な構成だ。
おいしい料理が毎回出てくるのはこの作品の売りだけど、あくまで主役は料理じゃない。この作品のメインディッシュは、「食卓」なのだ。料理は心、食事は愛。シロさんの母親から誕生祝に届いたドンコも、シロさんがケンジに作る料理も、小日向さんとジルベールに危機?を呼んだアサリも、すれ違い生活に耐えかねたケンジが欲張りオムライスをシロさんにあげるのも、全てが愛情。2人で向き合って、ご飯を食べる。そのひとときが、一番の幸せなのだ。
つくづく、優しさで満たしてくれるラブストーリーだと思う。満腹です。