最終話は、私の予想(というか期待)を遥かに飛び越えた、まさかの結末。これを理解し、飲み込んで、受け入れるのには相当な時間がかかった。
春田と成瀬は付き合うことにはならなかった。成瀬の気持ちはまったく春田には向いていなかったから。ここまでは理解できた。
成瀬にとって春田は「大切な人」止まりで、「好きな人(付き合いたい人)」ではない。これはリアルの恋愛ではよくあることだし、なんとなくこうなる予感もしていたので、もちろん残念だったけど、成瀬エンドにならなかった理由は受け止めることができた。
最初から最後まで一度もブレることなく、シノさんへの一途な恋を突き通した成瀬。そして、そんな成瀬を一度は拒絶したものの、これから彼に惹かれていくであろうシノさん。ふたりはこれからも一緒に笑い合い、幸せになってほしいと、心から思った。
私がどうにも解せなかったのは、ラストで春田の気持ちが武蔵に行ったこと。これはまったくの予想外で、感動もできなかったし、笑えもしないし、怒るのとも違うし、ただただ呆然とした。
7話までは間違いなく、春田と成瀬の物語だった。私のような(成瀬エンドを望む)ガチなファンではなく、フラットな一般視聴者が見たとしても、本当に誰がどこをどう見ても、7話のラストのあの公園で、成瀬は春田に心を動かされて、そのままふたりは結ばれる結末へ進むものとしか見えなかった。映像も演技もセリフもすべて、明らかにそう作り込まれていた。
要は、それらはすべてミスリードだったということだ。視聴者の期待を成瀬エンドに向けるために、7話分もかけて思わせぶりな演出をこれでもかと散りばめて、武蔵エンドは匂わせもせずひたすら隠し、最後の最後で大どんでん返し。
この手法、「王道ラブストーリー」に必要だろうか。ラブストーリーに伏線やらミスリードやら、そんなのいらないのでは。シンプルに見て「あ、この人はこの人が好きなんだろうなー」と、ふわっと分かるようなドラマが「王道ラブストーリー」だと思う。
「武蔵エンドを匂わせる箇所(春田が武蔵に惹かれる描写)は、探せばけっこうあった。気付かないほうが悪い」という意見もあったが、注意深く目を凝らし、更に考察も加えて(ここのシーンであれこれこうしたから、春田は武蔵に惹かれたんだ、など)じっくり見なければ分からないなんて、恋愛ドラマとしてどうなの?と甚だ疑問。
武蔵エンドに文句が言いたいわけではなく(成瀬エンドを望んでいたので残念ではあったが)、そのエンドへのこじつけ方に違和感。これが、1話から8話にかけて、(春田→成瀬の話とも並行しながら)春田が戸惑いつつも徐々に武蔵に惹かれていく様子が描かれた物語だったとしたら、当然ながらこんなモヤモヤはしなかった。
成瀬に惹かれ、嫉妬し、自分の想いをぶつけて、諦めて、彼を見守ろうと決めて、そして成瀬への気持ちに区切りをつける、という一連の春田の心情の変化の描き方はとても丁寧で、その点は本当に良いドラマだと思う。
だからこそ、8話のラスト残り3分で唐突に表れた、ごく普通に見ている視聴者には1mmも伝わらない春田から武蔵へのベクトルが、非常に残念でならない。
延々と否定的なことを書いてしまったが、否定したいのは、武蔵エンドへの過程をこれでもかと頑なにひた隠しにした製作側の手法のみ。
このドラマを最後まで見たことは後悔していないし、見て良かった。skyというドラマに出会えて良かった。前回の感想でも書いたとおり、私の中でこの作品に対する評価はS1を遥かに超えている。武蔵エンドという結末でも、この気持ちは変わらない。
自分の好きになった人が、必ず自分を好きになってくれるわけではない。それでも人を愛することはすばらしい、と教えてくれた演者さんたちと製作側には感謝している。