『同期のサクラ』は、典型的な遊川和彦作品だったと思う。“忖度しない”主人公・サクラが(物申すしかないほど理不尽な)他人のトラブルに巻き込まれて、森山直太朗「さくら(二〇一九)」をバックに解決へ導く。どんなときも己の正義を貫くサクラに対し、最初は異質な目で見ていた周りの人たちも、「やっぱりサクラはサクラだね」と翌週にはニコニコしている。気分が落ち込む胸糞展開も、全体的に大味な内容も、実に遊川作品らしかった。
先週の第9話では、事故で初回から昏睡状態に陥っていたサクラが目を覚ました。休職期間が長すぎたサクラは花村建設を解雇され、就活に励むが上手く行かず。故郷の新潟に帰ろうとするも、同期4人に「そんなのお前らしくない」「また一緒に働こうよ」と説得され、東京に残る決意をした。ここだけ聞くと良い話のように思うが、全く良い話ではなかった。とりあえず葵は今後一切人様の鍋パーティーに参加をするな。
と、ここまでが最終回放送前に書いた部分。つい先ほど最終回を見たので、感想を追記する。
副社長になった黒川の鶴の一声で、サクラは花村建設に復帰する。「なぜお前が痛い目に合ってきたかわかるか?お前に力が無いからだ」と言い切った黒川は、サクラに“目に見えるほどの権力”を与える。精鋭チームのリーダーに抜擢、重役会議への出席、挙句の果てにプロジェクトで副社長の承認を得るにはサクラの納得を得ろ、とまで言い出した。間違った力の持ち方をしたサクラに対し、同期たちが逆に物申す展開。サクラがここで踏ん張りどきだと副社長に従うのもわからなくないし、同期が心配するのもわからなくないが、も少し何とかならんのかと思ってしまった。その後のサクラはますます仕事に熱を入れていくのだが、大好きな先輩・すみれさんに「仲間を大事にしろ」と言われたことをきっかけに、徐々に本来の姿を取り戻していく。最終的にサクラは社長になった黒川と直接対決をするのだが、「私の仲間は力です!仲間がいれば困難も乗り切れます!」と会社を後にした。
無事に次の就職先が決まった日、サクラと同期たちは別々の道を歩み始める。桜の木をバックに「私には夢があります!」と口々に己の夢を語り合う5人の姿は、なんとも奇妙な光景だった。仲間の尊さを語るのならば、あの世界一気分が悪くなる鍋パーティーは本当に必要だったのか。今日の「醜いアヒルの子が白鳥になって冷たくなった感じ?」と容赦なく鋭利な刃物で刺しにきた百合の言葉は必要だったのだろうか。……何はともあれ、まるで“見せしめ”のように不幸にされていたサクラが、笑顔で幕を引けたのは良かった。肩透かしはくらったものの、『同期のサクラ』はやっぱり遊川作品らしい作品だった。燃料切れのように力尽きてしまった最終回を見た今、改めて思う。