何を隠そう、『私の家政夫ナギサさん』にハマっている。新作ドラマは面白いものが多いけれど、本作は中でも「考えさせる」作品。火曜10時枠は『逃げるは恥だが役に立つ』『わたし、定時で帰ります。』等々、働き方をテーマにしたものが多く、その流れをくんでいる作品でもある。
第7話までをまとめたコラムはFRIDAYデジタルさんで書いたので(宣伝!)、第8話はこちらでぽつぽつと。本当は感想とか考えずに楽しもうと思っていたのだけれど、観ていたら「これは書かねば!」と思ってしまい……。というのも第8話、結構ハレーションを起こしそうな気がしたからだ。これはかなりの挑戦回だと思う。
もともと『私の家...
何を隠そう、『私の家政夫ナギサさん』にハマっている。新作ドラマは面白いものが多いけれど、本作は中でも「考えさせる」作品。火曜10時枠は『逃げるは恥だが役に立つ』『わたし、定時で帰ります。』等々、働き方をテーマにしたものが多く、その流れをくんでいる作品でもある。
第7話までをまとめたコラムはFRIDAYデジタルさんで書いたので(宣伝!)、第8話はこちらでぽつぽつと。本当は感想とか考えずに楽しもうと思っていたのだけれど、観ていたら「これは書かねば!」と思ってしまい……。というのも第8話、結構ハレーションを起こしそうな気がしたからだ。これはかなりの挑戦回だと思う。
もともと『私の家政夫ナギサさん』は心温まる反面、とても勇敢なドラマで、女性の男性に対する差別と偏見に切り込んでいる。主人公のメイはナギサさんを最初「おじさん(いい意味ではないほう)」と呼んでいたけれど、自分の中にある差別的な感覚を反省し、ナギサさんと特別な絆をはぐくんでいく。つまり、男女間の性差別や、雇用関係を超えた信頼。
それが今回、田所と薫というキャラをナギサさんに向き合わせることで、もう1回差別的な部分に立ち戻る。田所は「おじさん(いい意味ではないほう)」とナギサさんに失礼な発言をしてしまう。今までとは異なり、同性による差別までも描かれるわけだ。
そして薫も「おじさん(いい意味ではないほう)」と呼び、さらにナギサさんを「使う」ような態度をとる。これは、シーズン序盤のメイをオーバーラップさせると同時に、金銭による使役というちょっとシリアスな要素も感じさせる。
ただ非常に上手いなと感じたのは、これらを意識的に配置しているということ。今回はいわば田所と薫が「憎まれ役」になることで、メイとナギサさんの絆を引き立たせる関係性になっているわけだ。そして、メイのこのセリフが秀逸。「私のもう一人のお母さんなの」。この言葉は彼女にしか言えないものだし、視聴者の中にもやもやと浮かびそうな「ムムム…」という感情の緩衝材でもある。
他人はナギサさんの外見だけを見てカテゴライズしてラベリングして、差別する。でも内面を知れば、そんな考えはなくなる。田所も薫も結果的には自分の非を認める形になっていて、そこも「敵を作らない」本作の良さが感じられる。それに、この感覚は「家事が苦手で汚部屋に住んでる」田所にも通じる。彼は彼で「外見と中身のギャップ」に苦しんでいる人間だからだ。
…とここまできれいにまとまったところで、最終回はもうひと波乱起こりそうな予感がプンプン。ここに恋愛が絡むとどうなるのか…? 社会的なテーマに真摯に向き合う本作は、最終的にどんな答えを下すのか。楽しみに見届けたい。