木村拓哉の出演ドラマは当時から結構観ていましたが、おそらく、この作品が最高傑作だったのではないかと思います。とにかく謎が謎を呼ぶ展開で、毎回、物語の続きが楽しみで仕方なかったです。中でも、陣内孝則が演じる国府吉春の存在感は凄かったですね。じわりじわり確実に目的を遂行していく姿と陣内の怪演にはただただ怖かったです。真犯人が誰なのかを追うかたちでストーリーは進んで行きましたが、キャラクター一人ひとりの人物描写が非常に丁寧で絶妙なテンポだったので、最後までまったく目を離すことなく楽しめた気がします。このドラマの登場人物の共通点はそれぞれがAC（アダルトチルドレン）であるということ。自分自身もまたACであると自覚していましたので気持ちを理解しやすかったし、スッと話に入って行けました。ACの定義づけには様々なものがありますが、過去のトラウマが邪魔をして現在を生きることが困難になっている人々のことを指すと理解しています。たとえ真犯人が誰なのかに途中で気付いても楽しめるようになっていて、エンターテイメント性の高い作品でした。中でも僕が一番驚いたのは美奈子（中山美穂）が最終的に自分の家族を惨殺した真犯人である輝一郎（仲村トオル）のことを許した点でした。彼女のまさに聖母マリアとも言えるような母性愛の深さには感動しました。本当の意味で美奈子は輝一郎を愛していたのです。誠に残念ながらこのドラマを書いた野沢尚さんは自殺してしまいましたが、この作品を越えるような作品はそう簡単には現れないと思います。それぐらいに素晴らしい傑作でした。