“共演NG”。それは一種の都市伝説のようなもので、真相は私たち視聴者が知る由もない。
業界でまことしやかに囁かれているであろう“共演NG”を題材にしたドラマが生まれた。あるようでなかったような設定だ。タイトルはそのまんま『共演NG』。かつては“結婚したいタレント”として名を馳せた元トレンディ俳優を中井貴一が演じ、劇団員から国民的ヒロインへと成長し、今では“強い女”の代名詞ともなったベテラン女優を鈴木京香が演じる。二人の気難しい役者を支えるのは、リリー・フランキーと猫背椿。この時点で既にワクワクしてしまう!遠山(中井貴一)の二股交際が原因で長らく共演NGだった二人は、25年ぶりにテレビ東洋のドラマ「殺したいほど愛してる」で共演することに。しかし、主演の二人もさることながら、ドラマの出演者全員が共演NGの組み合わせだったのだ!
テレ東お得意の自虐ネタや、いわゆる“メタ要素”もテンコ盛り。このドラマに社運が掛かっているのは、テレビ東洋だけではないはずだ。医療ドラマや刑事ドラマばかりになってしまったフジテレビ月9のすぐ後に、平成初期を彷彿とさせるドラマを、しかもテレビ東京でするなんて。そもそもの企画自体がおもしろい。しかも中井貴一や鈴木京香、そこに加えて里見浩太朗や錚々たるメンバーが参戦してくるのだ。注目せずにはいられない。
ただ一つ気になったのは、コロナウイルスの描き方。コロナを描いても描かなくてもどちらでもいいのでが、とにかく統一してほしい。むしろ、昨日の一時間でコロナ描写が曖昧だとこんなにも気が散ってしまうものかと痛感した。
物語の登場人物たちの目的は、ドラマ『殺したいほど愛してる』を“バズらせること”。しかし“バズること”が全てではないと、誰よりもテレビ東京のドラマ班自身が知っているはずだ。劇中に登場した通称“バズらせ屋”もかなり胡散臭く描かれており、アレを良しとしている風には思えなかった。バズりの先に何があるのか。テレビ東京の大逆襲を、心待ちにしている。