“リモラブ”。このタイトルが何を意味するのか、2020年の私たちは知っている。コロナウイルスが猛威を振るい始めてから半年以上が経った今、私たちは新型ウイルスと共存せざるを得なくなった。
休止していたテレビドラマは通常どおりに動き出し、リモートドラマという新たな形式も生まれた。直近の作品では『MIU404』の最終回で2020年現在の東京を描いていたものの、「ドラマでコロナ禍を描くか」は各局とも躊躇いがあったように思う。コロナを取り入れることによって、マスクやラブシーンなど様々な制限が生じるからだ。しかし、この状況を逆手に取り、コロナ禍でしか成立しない作品に着手したのが日本テレビの『リモラブ』。たしかに連続ドラマでコロナ禍を取り入れるのは難しい。しかしこの未曾有の大事態にドラマが生まれないはずがないのだ。
波瑠が演じる主人公の美々は、大手企業“カネパル”に所属する産業医だ。実際の産業医とは仕事が異なるらしいが、今作の美々は社員の健康を守るべく、日々奮闘している。恋愛はどちらかというと選ぶ方の立場であり、優雅にお一人様を満喫していたのだが、新型コロナウイルスで生活は一変。ネットゲームで出会った“檸檬”に心惹かれていく。
第1話では、主に緊急事態宣言が出た春頃から解除されるまでを描いていた。コロナについての迷信を他人に話す女子社員や、意味のないマスクの付け方をしている男性たち。まさに現実の私たちと同じような姿がそこにあった。賛否が分かれそうなコロナウイルスへの捉え方も、バランス良く描かれていたように思う。
さて、ここで波紋を呼んだのが主人公の美々先生だ。最近のドラマでは珍しい“高飛車なお一人様ヒロイン“で、男性を食べものに例えるクセがある。そこに関しては笑ってしまったのだが、男性をジャッジしたり、初対面の檸檬にいきなり「(ゲーム)下手ですね~」とダイレクトメッセージを送ったりと、初回からクセが強すぎる美々に戸惑う声も見かけた。ちなみに、” 初対面の人に不躾なメッセージを送りつけるネット上の人“は美々に限ったことではなく、信じられないことに一定数存在する。(そして本人から返信が来たことでそのアカウントに“人間”がいることを初めて認識し、萎縮するのだ)
でも今作の美々は、視聴者の共感を得ようと描かれたヒロインではないように思う。むしろ、〝こじらせているイタい人〟だと徹底的に描かれていた。お相手候補とされる5人の男性からの評価も芳しくない。しかし、100%のうち90%は理解しがたい美々先生というキャラクターの中にも、共感できる場面があった。この緊急事態の中、ふと自分が一人ぼっちのように感じて涙したり、勢いで打ったメッセージに死ぬほど後悔したり、突然始まった恋に急に走り出してみたくなったり。そんな10%の中に、このドラマの“リアル”があるのだと思う。
『世界は3で出来ている』でコロナ禍を描いたことのある脚本家・水橋文美江が、『リモラブ』ではどんな答えを出すのか注目したい。そして何より『スカーレット』で運命が変わった松下洸平が、新たな水橋脚本でどんな姿を見せるのかが楽しみ!