




予告編を観て「ああ、好きそうだ」と感じて第1話を観てみたら、めっちゃよかった。Apple TV+は他の配信サービスに加えて少数精鋭で、『サーヴァント ターナー家の子守』や『ジェイコブを守るため』『ザ・モーニングショー』といった優れたオリジナル作品が多い。
今回の『リトル・ヴォイス』は、ミュージシャンの女性を主人公にした青春物語。過去に誹謗中傷を受けたことから、自作の曲を人前で歌えないベス。「自分には才能がないのではないか」という不安を抱えながら、それでも音楽への情熱は隠せず……。犬の散歩のバイトや、音楽バーのバーテン、カバー曲を歌う仕事を行いながら、“何者か”になろうとする彼女の姿が描かれる。
目にするもの全部が音楽に繋がっていて、どうしようもなく歌詞や音楽が頭に鳴り響く。そこに、才能のあるなしは関係ない。『リトル・ヴォイス』はそういった「作り手のリアル」をエモーショナルに描いていて、1話を観ただけなのに非常にグッと来てしまった。
彼女の周りにいる人々も、個性的だが愛にあふれていて温かい。レンタルルームの“お隣さん”やルームメイト、バイト先の同僚、愛すべきワンコたち。手厳しいなかでも優しい父親、ちょっと手のかかる兄。気難しいベスに根気よくついてきてくれるバンド仲間。彼らの応援を受けて、ベスは少しずつ、自分のコンプレックスを克服しようと努めていく。もちろんそこには試練もあるのだけど、等身大の奮闘が見ていて気持ちがいい。
そしてやはり、音楽が素晴らしい。冒頭からエモーショナルな曲が語り掛けるように流れ、ベスが街中で見かける音楽の数々が、耳に心地よく響き渡る。『はじまりのうた』や『カセットテープ・ダイアリーズ』など、音楽をテーマにした作品は傑作が多いが、『リトル・ヴォイス』も心に沁みる作品といえるだろう。
ちなみに本作、グラミー賞を受賞したシンガーソングライター、サラ・バレリスが製作総指揮。道理で音楽が素晴らしいわけだ……。
調べたら、監督・脚本は『アイ・アム・サム』のジェシー・ネルソン。製作総指揮はJ・J・エイブラムス。Apple TVはクリエイター重視の作品作りを標榜しているから、なるほどなという人選だ。まだあくまで1話を観た段階だけれど、心が高揚するような素晴らしさに満ちていた。
1話約30分と気軽に観られるので、ご興味のある方はぜひ。