新型コロナウイルスの影響で、見え方が全く違ってしまった作品は多くあると思う。僕にとっては、『アンダー・ザ・ドーム』がその一つだ。約10年前のドラマだけど、今観るとぞっとするリアリティが付加されてしまった。
スティーブン・キングが原作を務めたこのドラマは、至ってシンプルなアイデア。「田舎町が突如、巨大な透明のドームに覆われる」、ただそれだけだ。しかし、外界と完全に隔離されてしまったその町では、混乱が渦巻き、裏切りや衝突が勃発(めっちゃドロドロの人間ドラマが展開する)。ドームの謎を探るミステリーも相まって、要素を絞った作品なのに毎話飽きることがない。
本作のメインのストーリーは、外界と遮断されたことで人間が変貌していくこと。他者を支配しようとする奴が出てきたり、逆に安心する奴が出てきたり、或いは恋人や家族と会えなくなってしまい、生活が荒んでいくものも……。その逆に、絆が芽生えるパターンももちろんある。日常が改変されたとき、秩序は崩れ去り、無法地帯になる……。特殊能力を持った人間がいなくても、平穏なんていくらでも変わってしまうのだ、という恐怖をまざまざと感じさせる。
そしてこの状況、つまり外界と遮断された世界、というのは、緊急事態宣言が敷かれた3ヶ月間、僕たちが実際に過ごしていた日常でもある。今、少しずつ日常が戻ってきて、外に出られるようになった。とはいえ、まだ状況は大きく好転してはおらず、僕たちの中にあの期間のしんどい記憶はまだ鮮明に残っていることと思う。
このドラマの中では、ドームは可視化されている。外に出られないという絶望はありつつも、安全に過ごせる範囲というのは明確だ。対して、今僕たちが過ごす日常は、どこまでが安全なのかが、全く分からない。家から出なくても、不安は消えない。そういった意味で、『アンダー・ザ・ドーム』よりも恐ろしい世界にいるのかもしれない、と考えるとかなり恐怖だ。