名脚本家・坂元裕二。最近のドラマを挙げても『最高の離婚』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『カルテット』などなど…素晴らしい作品を多数手がけてきた。鋭い人間観察、心に刺さるセリフ、コメディでもサスペンスでも関係なしの手腕……。彼が紡ぐ言葉の数々に、多くの人々が魅了されてきたことだろう。
その坂元が、リモートドラマに脚本を書きおろしたという。しかも広瀬アリス・すず姉妹、永山瑛太・絢斗兄弟が出演するということで、大いに話題となった。しかし、その内容は、予想と全く違っていた。とくにジャンル。SF寄りのファンタジーである。
脚本家(阿部サダヲ)は、彼だけに見える(?)ドングリとの会話の中で、脚本へのインスピレーションを見出し、執筆にとりかかる。そうして紡がれた物語を、広瀬姉妹や永山兄弟が演じるというわけだ。一種のメタ構造というか、劇中劇の体制をとっている。最近の坂元作品を観慣れた視聴者にとっては、驚きだったのではないか。
第1話は、広瀬姉妹が出演。ネアンデルタール人の末裔である姉妹が、ホモサピエンスとの付き合いについてあーだこーだやりとりする……という内容だ。何それぶっ飛んでる。マイノリティ側の人間がマジョリティ側の人間に対してやいやい言ったり、それでも好きになったら関係ないよね、という“らしさ”が描かれたりと、坂元作品ならではの味はあれど、かなり実験的だ。
第2話は、永山兄弟が出演。こちらは、ちょっと変わった兄弟のお話。近未来の日本で、「過去に流行した料理」を再現する仕事を行う2人が、だべりながらコロッケを作ったり、美人なマンションの管理人さんの話で盛り上がる。こちらも、設定が高度なため、観客がついていくのは大変そう。大衆性よりも作家性が前面に押し出された作品だ。
全4話中、第1話と第2話を視聴したが、放送時間の中だけでは咀嚼しきれない濃ゆい内容に、正直面くらったままだった。しかしそれは同時に、坂元裕二の新たな才能を発見する場にもなったといえよう。
この時期に、この座組で新たなジャンルに挑戦したチャレンジ精神。これこそが、表現者たるゆえんなのかもしれない。新型コロナウイルスによる外出自粛、その中で「守り」に入っていないか――。そんな警鐘に、襟を正されたような気がした。