「ザ!世界仰天ニュース」をご存じだろうか。世界で起こった衝撃的な事件を再現ドラマ仕立てで紹介するものなのだけど、自分と同じ「人間」に属するのに、想像だにしない恐ろしいことをやってのける者たちを観て、ぞっとさせられる。
Apple TV+の『見せかけの日々』は、まさにそんな感じだ。アメリカを震撼させた事件をドラマ化したサスペンス。メインの登場人物は、ある親子。娘に惜しみない愛情を注ぐ母親と、難病に侵されながらも懸命に生きる娘。慈善団体に建ててもらった家に引っ越してきた彼女たちの身に起こった驚くべき事件を、「現在」と「過去」を行き来する形式で描いていく。
本作で暴き出されるのは、人間の裏の顔だ。絵に描いたような善良な母娘は、本当に額面通りの「いい人」なのか? 物語を追っていくうちに、2人の仮面がどんどんはがれていき、どんどん恐ろしくなっていくことだろう。「信じる」ことの脆弱性……私たちは何をよりどころに他者を判断すればいいのか? 疑心暗鬼になってしまいそうな強烈な展開が待ち受けている。
物語は冒頭から「母が惨殺される」「娘が失踪する」といったビッグサプライズを提示し、「なぜそうなったのか?」を順を追って紐解いていく。このつくりもなかなかにショッキングで、家に踏み込んだ刑事がベッドのシーツをめくると、そこにはめった刺しにされた母の死体が……。メインキャラの1人が死亡し、もう1人は行方不明。いわば主人公不在の状態で展開していくのだ。ものの5分も観れば、続きが気になってしまうに違いない。
過去シーンで描かれる、母と娘の関係性も考えさせられる。ネタばれは伏せるが、間違いなく健全な親子関係ではない。だがそれでも2人は親子の血でつながっている。このあたりのえぐみも、ディープでシリアスな作品を観たい方にはハマるのではないだろうか。
演技も凄ければ、物語も強烈。そして何より、これが「実話」だということに戦慄させられる。クオリティは十二分。ご興味のある方は、ぜひ試してみてほしい。