予告を観て気になっていた『ジェイコブを守るため』が、Apple TV+で配信開始された。『アベンジャーズ』のキャプテン・アメリカ役で知られるクリス・エヴァンスと『IT』のジェイデン・マーテルが父子役を演じるサスペンスだ。
どういう物語かを、ざっと説明しよう。14歳の少年が胸を複数回ナイフで刺されて殺された。犯人を追う刑事補は、自分の息子が事件に関与していたのでは?と疑念を抱き、仕事と父としての想いに引き裂かれそうになる……。彼が選んだ行動とは?
冒頭、父親が裁判にかけられること、『ジェイコブを守るため』というタイトルから、何かしらを犯してしまったことは明らかだ。それが何なのか?を解読していくのが、本作の醍醐味。
ある種の結果を最初に提示してしまい、そこに至るまでの内容を回想形式で見ていく、という作りが非常に上手く、良質なサスペンスと苦悩のドラマの両方を冒頭数分で期待させる。
現時点で公開されているのは3話まで。1話の段階では、上にあげたくらいの内容にとどまっているが、不穏な空気の創出や観る者に「予感」を抱かせる「置き」の演出などが実に巧み。
例えば、殺された少年(息子の同級生)について探るべく、学校で事情聴取を行うシーン。子どもたちの1人が「息子さんと話した?」と意味深なセリフを残して去っていく。
その後、息子との車中の会話で、課題の『ライ麦畑でつかまえて』の話から、「人はみんな嘘をつく」「イライラするんだ」と息子は語る。この辺りも、何気ない親子の会話に見せかけて、何か重要なヒントを表しているように映る。
そして、父はInstagramの投稿で、息子がナイフを所持しており、同級生から容疑者として疑われていることを知ってしまう……。SNSを効果的に使った演出も良い。あくまで1話を観た段階だが、非常にクオリティが高い印象だ。
物語として続きが気になるのはもちろん、画面全体に不穏な雰囲気を醸し出させてシリアスなムードを保っている。かといって重くなりすぎず、上に挙げたような新展開を効果的に挟み込むことで、視聴者はずっと緊張感を保ちながら観続けられる。
役者陣の演技も素晴らしく、クリス・エヴァンスの検事補と父親の狭間で苦しむ演技、どうしようもなく父親の情や業がにじんでしまう絶妙なさじ加減には唸らされる。
ジェイデン・マーテルはミステリアスな雰囲気を常に纏い、視聴者にとって「疑惑の人物」であり続ける。この「疑惑」がポイントだ。父母を愛する良い子でありつつも、何か闇を抱えているようにも見える。彼もまた、微妙なニュアンスで揺れ動いているのだ。
面白いドラマを引き当てたというワクワク感を得られることは必定。ご興味のある方は、是非試してみてほしい。