このドラマを待ち望んでいた理由は2つあった。
1つは、見たかった田中圭だから。
おっさんずラブというドラマで、人を好きになっていく戸惑いや喜び、人を傷つけざるを得ない辛さを笑いの中で繊細に演じた田中圭が、恋愛要素のない作品で主役を演じる姿をずっと見たかった。
もう1つの理由は一枚の写真。
去年の夏の終わりに、田中圭の有料ブログに短髪で映画のチケットを手にした写真が載っていた。あの笑顔の田中圭の思いが結実するのがこのドラマだった。
当時の田中圭を取り巻く諸々を思うと、このドラマへの意気込みは想像以上のものだったろうと思う。
ドラマの内容は、子供の頃に生き別れになった兄弟が、21年振りにノンキャリ刑事とエリート検察官という立場で再会してある事件を解決するというもの。
父親が冤罪を生み出したと言われる刑事であり、二人はその過去を背負いながらそれぞれのやり方で事件を捜査する。
刑事物であり、三つの事件が繋がるストーリーもよくできていて見応えがあったが、警察組織の描かれ方にはリアリティが感じられなかった。このドラマが見せたかったのは、川上祐介と唐沢真佐人そのものだったと思う。
熱血刑事と冷徹な検事という一見正反対に見える二人だが、職業人としての偏りがある点は同じだった。
この二人と対比される存在として、加藤巡査という人物がとても大きな役割を果たしていた。
警察官であることよりも、道を踏み外そうとしている少年に一人の人間として真正面からぶつかる加藤巡査に、祐介も真佐人も大きな影響を受ける。
この3人のバランスがとても良かった。
田中圭は、突っ走って失敗して立ち止まり、周りに助けられながら成長する演技がとても巧い。ただ突っ走るだけでなく、その過程での心の機微も繊細な演技で表す。
川上祐介役は、そんな田中圭の良さが凝縮された役だった。
クールに徹した中村倫也とのコントラストがはっきりしていて、二人の関係性の変化も面白かった。
どんな形でも良い、この二人がぶつかったりすれ違ったり橋の欄干を叩いて別れたりする姿を再び見てみたい。