少女漫画の主人公は、ときどき凡人には理解しがたい行動に出る。『恋つづ』のヒロインこと“勇者ちゃん”は職場でこそドジっ子キャラだけど、少女漫画的アクションにおいては最初から玄人レベルのワザを見せていた。私は第7話で見た「ソフトクリームを敢えての最下層から舐めて鼻にクリームを付けることで健に指で拭ってもらい、そのまま応用技を活かして白昼堂々とキスをする」、あの流れるようなコンボが忘れられない。
先週放送された第8話では、急に現れたイケメン御曹司の上条(清原翔)が健に暴力行為をされたと訴えるシーンから始まる。この一連の騒動は上条の策略なのだが、健はチームから外され、今まで担当していた子供の大切な手術に立ち会えなくなってしまう。担当看護師である勇者は上条を説得。その結果、「俺と一緒にシンガポールに来てくれるなら訴えを取り下げるよ」と少女漫画らしい唐突な選択を迫られることになった。
ここで一度整理したい。与えられた選択肢は2つ。上条と一緒にシンガポールへ「行く」か「行かない」かだ。
① 上条と一緒にシンガポールへ向かう決意を固める→それを知った健が止めに入る→愛の力で上条が根負けし、訴えを取り下げる。
②シンガポール行きを断る→押しても動かぬ二人の絆に上条が根負けし、訴えを取り下げる。
どちらのルートでも上条が訴えを取り下げる結果になるのだが、おそらく①の方が無難だろう。
……しかし、勇者が導いた答えは違った。
「ごめんなさい、上条さんと一緒に行くことは出来ません」
「でも、先生とは離れます。私にとって、とても辛いことです……」
「なので、それに免じてどうかお許しください」
正解は「シンガポールには行かない、だけど病院も辞める。大好きな天堂先生と離れるから、あなたも私を諦めて」というものだった。二択問題だと言われていたのに「答えは……まさかの5番でした!」パターンである。なんだそれ、その選択肢なかったじゃん。しかもなにげに清原翔を一番責めるタイプの答えだ。そんな択があったのか、あっていいのか。昔、好きなタイプが全く違うと定評のある友達と3人で「kinki kidsでは誰派?」という話になり「剛!」「光一!」とつづいた後に、残す一人が「別にどっちでもないかな」とスンとした表情で答えたときの気持ちを思い出した。
ブレーキをかけることを知らない勇者は、宣言通りに地元へ帰り、そのまま近くの診療所で働き始める。しかも新しい職場にめっちゃ馴染んでいるではないか。まるで最終回のような展開だ。しかし何処からともなく湧き上がった佐藤健が、勇者を颯爽と連れて帰るのだろう。読めた、読めてしまったぞ。
案の定、買い出しの最中に健から電話がかかってきて(sugarではない)、Twitterのタイムラインは「どうせ向かいの道路にいるんだろ」の声で溢れた。私も思った。しかし我々凡人の遥か斜め上を行くのが『恋つづ』の佐藤健である。向かいの道路ではなく真正面でもなく、まさかのバックハグで登場したのだ。
いつの間に背後を……?
勇者のとんでもない行動により、二人の愛は更に深まることになった。野暮なツッコミをする私を置き去りにして。前回のソフトクリームにつづき、またしても勇者は健のハートを鷲掴みにしたのだ。
画面前でボヤき続けた『恋つづ』も残すところ後わずか。勇者ちゃん、勇者さん……いや、ここまで来たら師範代と呼ぶべきか。圧倒的勝ち組となったヒロイン・七瀬のぶっ飛んだ行動から、我々は学ぶべきことがあるのかもしれない。