あの『SHERLOCK』の製作陣が新作を作る……ということでワクワクしていたら、出てきたのはなんとドラキュラ伝説のドラマ化。これはなかなか唆る企画だ。
ドラキュラといえば、誰もが知っている存在。美女の血を吸って永遠に生きる貴族……その後、「吸血鬼」という言葉は様々な創作物に影響を与えた。『インタビュー・ウィズ・バンパイア』も『トワイライト』シリーズも、『ジョジョ』や『鬼滅の刃』も吸血鬼モチーフだ。マーベルの新作『モービウス』もそう。そんな有名すぎるキャラに、どう新味を足すというのか?
シャーロック・ホームズを現代アレンジして伝説を打ち立てたチームは、今回も「なるほど……」というアプローチをやってのけた。それは「伝統」と「異端」の掛け合わせだ。
まずはこの「伝統」の部分。考えてみれば、ドラキュラよりも吸血鬼の方がメジャーになった昨今、本流の影は薄くなっているのかもしれない。そこをしっかり再喚起させるために、往年のドラキュラ映画の質感を踏襲し、ゴシックホラー全開で見せる。洋館、謎の主人、おどろおどろしい雰囲気……そして、ドラキュラの設定を丁寧に見せていく作りも興味深い。
ただそこに「異端」が組み合わさると、作品が一気に独自性を帯び始める。目を引かれるのは冒頭だ。生きるしかばねのようになった男。彼は、ドラキュラ伯爵の元から命からがら逃げ出してきたという。物語は彼の「告白」という形で幕を開け、生命力に溢れた彼がどんどんと置いていく姿と、老人のようだったドラキュラ伯爵が若返っていく姿を反比例で描く。被害者の視点で描かれるのはミステリー要素を増加させ、観るものをグイグイと引き込んで面白い。
『SHERLOCK』と同じ90分×3話の作りなのだが、2話以降はドラキュラ伯爵の冒険が描かれる。これもなかなかお目にかかったことがなく、こう来たか!と思わされる。
現代ホラーとはまた違った風味の本作。古典のアレンジという意味でも、作り手の工夫が感じられる快作だ。