不道徳なのに、引き付けられる。残虐なのにピュア。実に斬新なドラマだ。1話を観れば、のめり込んでしまうに違いない。
端的に言うと、本作は「ストーカーと美女のラブストーリー」になる。書店員の主人公が、店を訪れた美人に惹かれる……というところまでは王道のラブストーリーなのだが、開始数分でその前提は崩れる。
主人公が「心の声」をモノローグ形式でひっきりなしに語る作品なのだが、美女がクレジットカードを出したら「僕に名前を知ってほしいのか?」と考えるなど、なかなか妄想癖が強い。ちょっとした気持ち悪さが漂うオープニングを経て、帰宅した彼は、美女の情報を元にエゴサを開始。インスタ等から嗜好や交友関係、果ては自宅までも突き止めてストーキングを開始する。
恐ろしいのは、彼にとって罪の意識がないことだ。それどころか、「彼氏がクズ」「職場の上司に言い寄られている」という問題を抱えた彼女を、正しい方向=自分と付き合うことに「矯正」しようとする。まずは邪魔な彼氏を呼び出して……
とまぁここまで書くとSNSの恐怖を描いたサイコサスペンスにしか見えないかもしれないのだが、『YOU』の特異性はここからだ。それは、冒頭にも述べたラブストーリーの部分。主人公はあくまで彼女に純粋な恋心を抱いている。しかし、彼女の中では彼は「友だち」。恋愛対象になかなか入れない……というもどかしい展開が続くのだ。そんな時に落ち込んだりしょぼくれたりする主人公は実に人間味に溢れていて(サイコパスなのに!)、観る者に不思議な感覚を与える。共感してはいけないと思いつつ、同調してしまうような……
また、やり方は決して許されないのだが、1人の薄幸な女性の騎士となろうとする想い自体は美しいものだし、好きな女性のために身を粉にして頑張る部分は好感が持てる。周りのクズ男か、隣のサイコパスか。どちらが彼女にとって幸せなのかを問う物語でもあるのだ。
1話2話でも物語がサクサク進み、次々に新たな展開が待ち受ける点も魅力。シーズン2も始まったばかりなので、ぜひ一度試していただきたい。