「ゴシックミステリー」や「サイコスリラー」といったジャンルが好きな方にはどストライクなドラマだ。映画でいうところの『セブン』『ボーン・コレクター』、小説でいうところの『シャーロック・ホームズ』、ドラマなら『SHERLOCK』『HANNIBAL』『マインドハンター』あたり。特に文学性の高い怪奇事件に興味をそそられるなら、試してみて損はない。
舞台は19世紀のアメリカ・ニューヨーク。男娼の少年が目や臓器をくり抜かれ、殺されるという事件が連続して発生。当時まだ未開拓の分野である犯罪心理学者と秘書の女性、新聞の挿絵画家の3人が、巷を騒がせる連続殺人事件の解明に挑む、というストーリーだ。出演は『アベンジャーズ』シリーズにも出演したダニエル・ブリュール、『美女と野獣』のルーク・エバンス、ダコタ・ファニングと人気実力派。『TRUE DETECTIVE』(これのシーズン1は大傑作)や『007』新作のキャリー・ジョージ・フクナガが製作総指揮と、完全にハリウッド大作レベルのメンバーがそろっている。
本作の面白さを端的に言うなら、「雰囲気が抜群に良い」「ストーリーが面白い」「演技・演出含めてクオリティが高い」といった部分。犯罪捜査が未発達で、指紋で容疑者を特定できるなんて思われていなかった時代。プロファイリングもなく、“儀式”を繰り返すシリアルキラーの「思考」も「心理」も「手口」もわからない。それでも何とか捕まえようと、わずかな手がかりから犯人をあぶり出そうとしていくこのもどかしさ。現代に比べてできることが極端に少ない中、じりじりと真相に迫っていく緊迫感がたまらない。全10話かけて犯人をあぶり出していくためスローテンポといえばそうなのだが、小説をじっくり読み進めていくような奥深さが担保されており、焦れてしまうことはないように思う。
その部分をカバーしているのが、役者陣の見事な演技や、雰囲気抜群の世界観。画面を観ているだけで満たされてしまうほど隅々まで凝っていて、一個一個のシーンがまるで絵画のようだ。画面から漂ってくる「物語力」が、半端じゃない。さらに、メインの物語以外にも心理学者が抱える闇、複雑化していく人間関係など「続きが気になる」要素がいくつも用意されており、さらには「事件を隠蔽しようとする町の有力者」「警察内部の裏切り者」といったサスペンスとミステリーをあおるギミックも。
雰囲気を楽しむだけでも元は取れるのだが、ミステリーとしてもサスペンスとしてもスリラーとしても緻密に計算されており、1話観終えるごとの「余韻」がすさまじい。じっくり腰を落ち着けて観てみてほしい重厚なドラマだ。