誤解を恐れずに言えば、『13の理由』はシーズン2から“本性”を表す。前シーズン以上にエグく、やりきれない展開が待ち受けているからだ。
シーズン1で描かれたのは、女子高生ハンナが自殺した動機。残り2話で明らかになったのは、彼女が巻き込まれた、口にするのもおぞましい事件とその犯人だった。シーズン2で焦点が当たるのは、その犯人を巡る裁判だ。全編にわたって途方もないほど長い裁判が描かれ、その中で登場人物の人生が狂わされ、同時に視聴者の心もえぐられていく。
シーズン2のテーマを一言で言うなら、「罪の所在」だろうか。このシーズンでは、これまでにあったような「謎」はない。一応、主人公の仲間たちを脅迫する謎の存在というサスペンス要素はあるものの、メインストリームは「ハンナの無念は晴らされるのか?」になる。彼女におぞましい仕打ちをした犯人は、ちゃんと裁かれるのだろうか? まるですんなりといかない重く苦しい試練が、主人公と仲間たちにのしかかる。
これを読んでいる方はシーズン1を視聴済みと信じて軽くだけ核心に触れるが、「レイプ事件」というものが抱える立証の難しさ、裁判の大変さなどがシーズン2では切々と訴えられる。レイプの被害者は名乗り出るためにすさまじいほどの勇気を必要とするし、証拠がなければ立証はなかなか難しい。被害者は確かにそこにいるのに、罪を課せないのだ。
『13の理由』は、シーズン1では「自殺」を止められなかった現行の学校のシステムを描きつつ、シーズン2ではレイプ問題へと踏み込んでいく。学生の問題を超えて、より大きな社会問題へとシフトしていくのだ。
目をそむけたくなるような描写は、特にはない。だが、高校生たちの心が壊れていく姿を残酷に、静かに見つめている。『13の理由』ならではの落ち着いたトーンが、一層重みを増して突き刺さる。エンタメの要素はあるものの、よくここまで「我慢」して作り上げたと思う。安直な「観客サービス」などに逃げなかった、製作陣の並々ならぬ覚悟を感じる。
彼らは世界にどれだけ絶望してもなお、仲間と前に歩もうとする。それはきっと、希望だ。私たち視聴者もいたたまれなさに身を切られそうにもなるが、傷つきながらも生きてゆく彼らの姿に、心を震わされもする。新しい恋に生きようとするが、死んでしまったハンナの幻影に苦しむクレイの姿も切ない。亡くなっても、消えるわけじゃない。心に残り、救いもすれば苦しませもする。
1人の女性の死を真正面から受け止め、多くの辱めを受けた女性たちの「心の死」から目をそらさない。『13の理由』シーズン2は、単なるドラマという枠を超えて、非常に大きな役割を果たしている。ここまで1人のキャラクターの死を真摯に描いたドラマは、過去になかったのではないだろうか。観るのに覚悟がいる内容ではあるが、だからこそ今の時代にこの作品は必要なのだ。より良い未来の礎となるために。