衝撃的なテーマが全米を震撼させ、社会問題化したNetflix製作ドラマ。『13の理由』というタイトルは、細かく言えば「彼女が自殺した13の理由」だ。
ある日、女子高生ハンナが手首を切って自殺した。その後、同級生クレイの元にハンナから小包が届く。中には7本のカセットテープが入っていて、ハンナの「自分が自殺を決めた13の理由を語る」という告白が収録されていた。何が、そして誰が彼女を死に追いやったのか? シーズン1の概要は、大体こういった感じだ。
ジャンルで言うとサスペンスやミステリーになるだろうが、自分はここに「社会派」を足したい。いじめや未成年による犯罪……本作で描かれるテーマは、現実社会が抱える問題に直結しているからだ。日本の作品であれば『告白』や『3月のライオン』で言及された「学校という地獄」が近いかもしれない。本作はそういった問題を説教くさく見せるのではなく、「自殺に追い込んだ13の理由」が毎回明かされるというミステリー仕立てのストーリーで興味を引き、そのうえで諸問題を考えさせる、というスマートなつくりになっている。
ちなみに本作で描く問題の深刻度はシーズンを追うごとにエグ味を増していくが、それは別の機会に置くとして、まず注目していただきたいのは『13の理由』という作品のトーンだ。冷徹なほどに、静かで淡々と描いていく。この過剰さをはぎ取った演出は実に見事で、多くの視聴者から評価された理由の一つでもある。つまり、実にリアルなのだ。
例えば『3年A組』は非常に面白い作品だが、エンタメ度をかなり強めている。「自分たちにも起こりうる物語」としては観ないだろう。その点『13の理由』は、一歩間違えば同じ目に遭ったかもしれないと思うほどに私たちの生活に近く、視点が「製作側」でなく「当事者側」だ。ドキュメンタリーのように生々しく、私たちの学生生活の記憶と結びついてエグってくる。しかも、生徒側だけでなく親についても細かく描写してくるから逃げ場がない。
もちろん面白い作品であることに疑いの余地はないのだが、それ以上に心をわしづかみにされるほどに苦しい。もし自分が高校生の時にこの作品に出会っていたらどうなっていただろうか――日本とアメリカの文化の違いはあれど、ここに収められている“事件”はひたすらにこわい。
回を追うごとに少しずつ真実が明かされていき、13の理由全てがさらされたとき――さらに深い闇が姿を現す。あなたは直視できるだろうか?